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弟の憂鬱
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シャットは真夜中の路地裏で煙草を吹かしながら頭を悩ませていた。最近ある派閥がボスである自分の寝首を掻こうとしているらしいと報告があったから…ではなく、兄についてだった。
「…なんで俺らがてめぇの首を、取ろうとしたこと…」
ピスッ、とサイレンサーのついた銃で裏切り者の始末をつける。完全に事切れた裏切り者を一瞬にも視界に入れずシャットは悩み続けていた。
「兄さんはなんで俺だけのことを見てくれないんだろう」
死体を蹴りあげ溝に落とすと、ため息をついて歩き始めた。それから空を見上げるとビルの隙間から白く輝く月が見えた。兄のような白い輝きに目を細める。ひどく眩しい。淡い月明かりも赤い目を持つシャットには眩しかった。でも、兄の存在はもっと眩しい。自分など霞んでしまうほど明るくて尊い人であった。そんな兄を見つけられたことは僥倖だった。これほど幸福なことはない、ないのだが。
吹かしていた煙草を捨て踏みにじって、拳を握りしめシャットは怒りに震えた。見つけた兄の傍には見知らぬ子供がいた。兄に庇護され、愛される汚らわしいΩの子供が。しかもその子供はあろうことか自分たち兄弟と同じ目の色を持つ身の程知らずでもあった。兄の傍にいることさえ許せないのに流れる血まで共通点があるとはシャットにはとても許容できる話ではなかった。兄の目さえなければ今すぐにでもあのΩの喉元を切り裂いて目を抉り出してやるのに、シャットは行き場のない怒りを眼前にいたかつての同胞たちにぶつけた。本来なら裏切り者の始末など部下にやらせる仕事だが今夜は格別虫の居所が悪かった。むしゃくしゃして手当たり次第に裏切り者たちの喉を裂き、背骨を折り、内臓を引きずり出した。一人、また一人と殺しながらシャットは兄のことを考えていた。銃弾を最小限の動きでかわしながら裏切り者と間合いを詰め、引き倒して四肢の骨を砕いた。男が絶叫すると喉を潰して声を封じた。兄以外の声など聞きたくもない。呼吸のできなくなった男が泡を吹きながら絶命する際もシャットが視界でそれを捉えることはない。シャットはほとほと兄にしか興味がなかった。
「おかえり、シャット」
「兄さん…!」
ろくに晴れなかった怒りをそのままに家に戻るとずっと思いを馳せていた人がいた。しかし脳内の日取りを思い出して、今夜は本来ならいないはずの日にちであった。もしかして、
「忘れ物してたの思い出して取りに来たんだ、すぐ帰るよ」
期待外れの答えだった。目を覚ましてくれたわけではなかった。兄は自分の気など知らずに部屋を漁っている。背後に立っても兄は警戒しない。殺し屋がそれでいいのだろうか。
「えーっと…あ、あったあった」
「兄さん、なに探してたの」
「あー…えっと、USBです…仕事用の…」
「そんなものマフィアの部屋に置いていかないでよ」
「あはは…シャットなら平気かなって」
「はぁ…」
やはり兄はシャットの気持ちなど微塵にも理解していない。隙が多すぎる、こんな様子だからあの子供に騙されてしまうのだ。
「?…シャット?」
頬を掻いて自らの失態を恥じる兄を抱き締める。兄は不思議がるものの逃れようとしない。乱雑に抱いた男にすら兄は黙って抱き締められるのだから、本当に隙だらけでお人好しだ。シャットが裏切り者で寝首を掻いたらどうするつもりなのだろう。
「…兄さん、このままここにいてよ」
「!……それは、できない」
「なんで?あのガキがそんなに大事?」
「そうだな…大事だ」
「俺よりも?」
「そんなことはない!」
「じゃあどうして?どうして俺の言うことは聞いてくれないの?」
「それは…シャットはもう大人だし…誉められたことじゃないが仕事もしているし…優先順位で言えば、お前より少年の方が心配なんだよ。わかってくれって…」
兄は苦しそうだ。表情と声色からシャットも、あの子供も優劣なく大事だということが伝わってくる。しかしシャットはそれが我慢ならなかった。
「なんで…なんで兄さんは俺のこと一番大事だって言ってくれないんだ!俺は兄さんの実の弟なんだよ!?」
「そうだけど…俺にはどっちが大事とか決められないよ。どちらも同じくらい大切なんだ」
「嫌だ…そんなこと認めない。兄さんの一番は俺だ。俺以外が兄さんに愛される必要はない!」
兄から離れながらシャットは叫んだ。無条件に兄に愛されるあの子供が果てしなく憎い。殺してやりたい。あれが生きている限り、兄は自分のところに戻ってきてくれない。あれが兄の枷なのだ。
「…やっぱりあいつは殺さなきゃ。あいつがいるから兄さんが毒されるんだ。汚いΩのガキが!」
「シャット!」
「離して兄さん!今から行ってあいつを殺してくる。四肢をもいで首をへし折って…目を抉り出して潰す!!」
「シャット!止めろ!!」
部屋を飛び出そうとするシャットを渾身の力でテンゼロは止める。しかし意識のあるαを止めるにはテンゼロは非力だった。それでもずるずると引きずられながらテンゼロは食い下がった。
「シャット…言うことを聞きなさい…!」
「いいや、兄さんの言うことだって聞くものか。あれを殺すまで兄さんの頼みだって聞かない」
「ぐ、うぅ………わ、わかったから!いる!シャットと一緒にいるから!だから止まりなさい!!」
「!!兄さん!」
テンゼロの一言にシャットは動きを止めた。足を止めたことでテンゼロは少し力を抜いた。
「兄さん、ほんと?」
「あ、ああ…お前が思った以上に不安定なのはよくわかった…お前が落ち着くまで一緒にいることにするよ、じゃないと本当にしでかしそうだ」
「ああ…よかった!兄さんが俺といてくれる!あはは!やった!兄さんが帰ってきてくれた!」
「いや、俺はお前が落ち着くまでで…うっぐぅ、くるし…!」
シャットは兄をぎゅうぎゅうと抱き締めた。兄が自分のところにいてくれる、自分を選んでくれた、という事実がシャットを晴れやかな気持ちにさせた。先程までの殺意なんてすっかり抜け落ちてシャットは無邪気に兄を抱き締め続けた。その様相はまるで幼い子供であった。
兄が一緒に住むようになってシャットの機嫌は目に見えてよくなった。凍りついた空気に息が詰まる思いをしていた部下たちが革靴の音を立てられるようになるほどだ。しかし、シャットの機嫌がよくなるのと同時にテンゼロの気分は落ちていた。シャットといることが辛いのではない。あの少年も仕方ないと許してくれたし、面倒を見てくれる友人たちがいたので緊急で心配する必要もなくなった。それでは何が原因なのか。それはシャットの精神が想像以上に不安定なことだった。再会したときからシャットが不安定なことはわかっていたが、一緒に過ごす時間ができてもそれが改善されている様子がない。それどころかシャットの少年に対する嫉妬と憎悪は燃え上がるばかりで些細なきっかけですぐに爆発してしまう。今はテンゼロが傍にいるからマシになっているが、テンゼロには何が地雷なのかさっぱりわからなかった。取り敢えず少年の話はしないようにしているが、何がきっかけで想起させるか匙加減がわからないでいる。
「どうにかしてシャットの興味を俺以外に向けられないものか…」
Prrrr...
「ん…アローからか。…もしもし」
『あーテンゼロよかった。ミストなんだけど発情期に入ったみたいなんだ。出て来れそう?』
「あ…もうそういう時期か。わかった説得してみるから、もう少し頼む」
『わかった。でも早めにね。ジェレミアくんは敏感に感じ取るから』
「わかってるよ。ホントに悪い…」
『いいってそんなこと。それじゃあまた後で』
「ああ、また後で」
なんというタイミングなのか。
通話を終了してテンゼロは深い深いため息をついた。頭が痛い、シャットが納得してくれるだろうか。
「兄さんどうしたの、ため息なんてついて」
「!?シャット…」
気配に気づけないほどテンゼロは考え込んでいた。そしてなにも答えが出ないままにシャットに会うことになってしまった。
「いや、あの…あのな、シャット。落ち着いて聞いてくれ。…少年が発情期に入ったみたいなんだ。だから、」
「だから?」
シャットの声色が地を這うように低い。絶対零度の視線にテンゼロは竦み上がりそうだった。怒っているなんて一言で片付けられないほどシャットは静かに激昂している。しかし言わなければ、テンゼロは己を奮い立たせた。
「…だから一旦戻らなきゃならない。1週間…そうしたらまたここに来るから」
テンゼロは目を逸らさなかった。逸らしたらシャットに対して不義理だと思ったから、目を見て真摯に向き合った。シャットは何も言わない。理解してくれただろうか。と、テンゼロが顔色を窺っているとシャットが話始めた。
「兄さんは本当に優しいんだね。だから、あれのことも心配するんだ」
「も、もちろん、お前のことも心配してる。ただ今は少年を優先しなきゃいけない…わかるだろ?」
「わかるよ、放っておけばあいつがどうなるかわからないからね」
「じゃあ…」
シャットは小さく笑った。笑ったことにテンゼロは安堵した。理解してくれたと思った。肩から力が抜ける。弟相手にこんなに緊張するなんて、テンゼロは目を伏せ肺から二酸化炭素を大きく吐き出した。しかし次の瞬間なにかが飛んできて、それがテンゼロの首に直撃した。気を抜いたテンゼロは反応するのが遅れた。弟相手だからと気をすっかり抜いてしまっていたから。意識が飛ぶ、そう自覚したときテンゼロが見たのは溶岩のように燃える弟の瞳だった。
「兄さんは心を開いた相手に対して気を抜きすぎだよ、だから寝首を掻かれるんだ」
その言葉はテンゼロに届かない。
「う…っつぅ…!」
目が覚めて一番に感じたのは首の痛みだった。シャットの手刀を正面から首で受けてしまった。意識が飛んだのはそのせいだ。その次に思ったのは自分はどうなったのかということだ。寝かせられていたようで体を起こして見回すと自分は見知らぬ部屋のソファーの上にいた。部屋からは煙草の臭いに酒の臭い、微かに火薬の臭いもする。全体的に黒い部屋、全く見覚えがない。
「兄さん、目が覚めたんだね」
「シャット…」
背後から声がして振り返ると、シャットが高級そうな革張りの椅子に深く腰掛け煙草を吹かしていた。
「ここは?」
「俺の執務室」
「お前、俺をアジトに連れてきたのか」
「じゃないと兄さんの居場所、バレるじゃないか」
「…それは俺を帰す気がないってことか?」
「そうだよ、帰す理由がない」
シャットは立ち上がると、ゆっくりとテンゼロに近づいてきた。質のいい絨毯が革靴の音を吸収する。無音で近づいてくるのが恐ろしい。目の前まで来てシャットは止まり、無表情にテンゼロを見下ろした。
「兄さんは帰る必要がない。兄さんは俺とずっと一緒にいるんだから」
「それは、できないって言ってるだろ」
「もう聞かない。兄さんの言い訳は聞きたくない。聞いたって何の解決にもなりゃしない」
「それは!お前が話をきか…がはっ!」
ソファー時に押し倒され首を掴まる。息ができない。
「話を聞かないのは兄さんの方だろ。…ああ、イライラする。子供の頃の兄さんはこんなに話を聞かない人じゃなかった。みんな、みんなあのガキが悪いんだ。あいつさえいなければ兄さんは昔のままだった」
「っぁ、!…シャッ…ト…!」
テンゼロは抵抗しなければと思った。このままでは殺されかねない。足を振ってシャットの腹を蹴りあげた。拍子にテンゼロの首を絞めていたシャットの手が外れる。腹を押さえてよろけたシャットから視線を外さず、テンゼロは飛び起きて追い討ちをかけた。側頭部目掛けて回し蹴りを一発入れる。短い悲鳴をあげて倒れたシャットが動けないことを目の端で確認しながら扉に駆けた。鍵を開けるが、開かない。足元にも鍵がついている。それを爪先で思いきり蹴って破壊するが、まだ開かない。見上げれば頭の上にまでご丁寧に鍵がつけられている。普通では手が届かない、テンゼロは即時判断して、ドアノブを足場にしようとした…。
「んぐ!?」
「ダメだよ兄さん。もう逃がしたりしない」
口と鼻を布ようなもので塞がれて羽交い締めにされる。身動きがとれない、布から薬品の臭いがする。すると、途端にテンゼロの体から力が抜けていく。
「んっ!んんー!」
「大丈夫だよ兄さん。兄さんが心配しないようにあのガキを殺したりしないから。その代わり…」
足からも力が抜け、自立することができない。シャットに抱えられながらテンゼロは次の言葉を待つしかなかった。
「兄さんには俺のモノだってことよぉく理解してもらうよ」
見上げた弟の唇は歪に笑っていた。
抱えられテンゼロはソファーに連れ戻された。全身から力が抜け抵抗する術がない。どんな薬を使ったのか想像もつかない。合法的なものではないのは確かだが。
「さて、兄さんにはどうやって理解してもらおうかな。今の兄さんは言っても聞かないからなぁ…」
ソファーの肘置きに腰掛けながらシャットは楽しそうに思案する。テンゼロは逃げられないということが揺るがないから、穏やかな表情だ。
「やっぱり体に教えた方がいいかな。俺なしじゃいられないようにして、それから心も調教してあげよう」
「それは…兄に使って、いい言葉じゃないぞ…シャット…」
「だって兄さんって強情じゃないか。だからあの家だって無鉄砲に飛び出して。…強情な兄さんの心まで素直にさせるのは骨が折れそうだからまずは、体から言うこと聞くようにしてあげる」
「シャット…なに、する気だ」
「ちょっと待ってて」
肘置きから立ち上がりシャットはソファーの背後に歩いていく。体を起こせないテンゼロは音と気配から想像する他ない。ガサガサと何かを漁る音がして少しするとカランコロンとガラスがぶつかるような音がした。そして無音。するとシャットがソファーの背後から姿を現した。探し物が見つかったらしい。
「これ。うちで扱ってる薬なんだ」
「薬…?」
シャットは両手で1つずつ瓶を持っていて、それをテンゼロに見やすいように目の前に翳した。ひとつは液体のようだ。透明で水と大して変わらないように見える。もうひとつは中身が透けていないのでわからない。
「これさ、いい薬なんだよ。キメれば昇天できる」
透明な液体が入った瓶を振る。テンゼロはそれが危険なものであると思わざるを得なかった。逃げたいが足に力が入らない。
「兄さんも気に入ってくれると思う」
シャットはもうひとつの瓶をソファーテーブルに置くと、透明な液体の入った瓶からコルクを抜いた。そしてそれを飲み干す。
「シャッ…んくっ!?」
シャットに口付けられる。開いた口に液体が流れてきて反射的に飲み込んだ。嚥下してから飲み干したかに見えたその薬とやらを飲まされたのだと気づいた。
「げほっゲホッ!シャット!なに、飲ませ…!」
「相手を昇天させたいときに使う薬、かな。酒に混ぜておけば朝まで楽しめること間違いなしさ」
「な…!…っあ…!?」
「本当はこれ、半分ずつ2回分なんだけど面倒だからそのままでいいよね、兄さん」
でも用法を守らないと即効性なんて副作用が出るね、とシャットは楽しそうだ。しかしテンゼロはそれに応えることができなかった。体が熱い、熱くて熱くてたまらない。逃れたいのに体が思うように動かない。それに下半身が重くて痺れてせり上がるような感覚がしてそれが何のために使うものなのか嫌でもわかってしまった。
「シャット…おま、え…!ぅあ…は、あぁ…」
「ふふ、兄さん、えろくていいね。女装してなくても十分可愛いよ。やっぱり兄さんは眩しいなぁ」
「あっ!シャッ…ト!やめ…んっく、ぅ…!」
「…でもまだ素直になりきれてないな…強めのやつ用意したのに」
テンゼロの隣に腰を下ろしてシャットはテンゼロの服を器用に脱がしていく。布が肌を擦るだけでもテンゼロは苦しくて上擦った声が漏れてしまうのを抑えられなかった。全身から汗が吹き出し、中心はすっかり勃ちあがっている。シャットが焦らすように内股を撫でるとそれだけで中心から透明な粘り気のある液体が溢れていく。
「兄さんどう?もっと触ってほしい?」
「誰が…弟に、そんな…ぁ…もとめ、るか…ぁ、ぅ…っ」
「ふー…やっぱりね。そうだと思ってもうひとつ用意したんだ」
シャットはあまり気にした風もなく、テーブルに置いたもうひとつの瓶を手に取った。そして蓋を取ると革手袋をつけたままの手のひらに溢した。透明だったがこちらは粘着質な液体のようだ。
「これは塗り薬なんだよね。でもあまり素手で触るのはおすすめしない」
「じゃあ…人に、使うな、よ…!」
「兄さんにはいいんだよ。気持ちよくなれるんだから。ねぇ、兄さん。兄さんはなんでこれが素手で触っちゃいけないかわかる?」
シャットは動きを止めてテンゼロを見つめた。口調は軽やかで無邪気だ。子供の頃、クイズを出しあったときのような明るさがあったがテンゼロの瞳にはその姿は狂気的に映った。
「…はい、時間切れ。兄さんには難しかったかな?ふふ…正解は…」
シャットはそう言いつつ、ドロドロに汚れた革手袋でテンゼロの中心をぎゅっと握った。そして擦りあげる。
「っっっあ!!」
びくりと動かないはずの弾かれたバネのように跳ねる。同時にテンゼロは吐精していた。
「あ…うぅ、は…ぁあっ」
「これさ…肌で触るとそこから発情するんだよね。だから、正気を保ちたいなら素手で触るのは止めた方がいいんだ」
「あぁ…あ、あぅ…く、ぅ…!」
「兄さんどう?気に入ったでしょ?」
シャットは射精したテンゼロを見てうっとりしている。射精後も萎えない中心を指先で擦ってやり、大袈裟に震える性器を眺めて熱い息を吐いた。
「う、うぅ…」
空気に触れるだけで患部が感じてしまう。性器が脈打つたび全身に電流が走るような快感が駆け巡る。頭に霞がかかって思考が正常に働かない。テンゼロは荒い呼吸を繰り返すことがやっとだった。そうやって苦しむ姿に興奮しているのかシャットはテンゼロの下腹部を撫でながらニコニコとしている。
「兄さん、どうかな。俺のこと欲しくて欲しくてしょうがなくなった?」
「っ、シャット…」
シャットは信じて疑わない目をしている。兄は自分に応えてくれると、心の底から信じている。
「…ふ、ぅ…んっ、ダメ、だ…シャット、」
「っ兄さん…」
テンゼロは今にも消えてしまいそうなほんの一握りの理性で、シャットを拒絶した。これは間違っていると、ほかの誰でもなく兄である自分が教えなくてはならない、それがテンゼロにできる唯一の兄らしいことだった。
「…そう。兄さんは結局俺のこと受け入れてはくれないんだ」
「!?ちが、…」
「容赦をしようと思ったことが間違いだったみたいだ。兄さんを俺のモノにするにはこんなんじゃあ足りないんだ」
「シャット…?」
そう寂しそうに呟くとシャットは瓶の中身を再び手のひらにこぼした。とぷとぷと、おそらく中身全てを手のひらからこぼれ落ちるのも気にせず、そしてシャットはテンゼロの足の間に割って入った。
「シャット、何するき…ぁあああああ”あ”あ”!!!!!」
「兄さんがいけないんだよ…俺のモノになってくれないから。素直に俺のモノになっていれば優しくしてあげられたのに」
シャットは薬でべったりと汚れた指をテンゼロの中に容赦なく突っ込んだ。薬を中に塗り込むように乱雑に中をかき混ぜていく。薬で脱力していても暴力的な快感に暴れるテンゼロの足を開いた片手で押さえつけて尚も激しく犯した。テンゼロが絶頂しても指は止まらない、奥へ奥へと侵入していく。
「ひ、あっあああ!!シャット…!あ、あぁぁああ!!」
「本来は外側に塗るものだから内側に塗ったらどうなるか知らなかったけど、とっても気持ちいいみたいでよかった。喜んでくれて嬉しいよ、兄さん」
「シャット…シャット!」
「なぁに兄さん?」
「シャット、い、挿れて早く、…お願い…シャットが、欲しいっあ、あぅう!!」
テンゼロの理性は焼き切れた。涙をこぼして全身を震わせてとにかく早く、この快感から逃れたかった。
待ち望んだ言葉にシャットは目を細め、口角は三日月型に歪んだ。
「一緒に狂っちゃおうよ、兄さん」
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