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ケーキの労働
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なんだよ、それ。
「お前はどうしたら、俺を見てくれるんだ?」
こういうときわかり合えないと思う。見えないけど、確かにある、薄い薄い壁。
「誰とでも、こういうこと、するのか?」
「そっくりな人が現れたらわからないじゃん」
楽しそうに、そう言い、太ももに顎を乗せてくる。猫か何かみたいだ。
「あー、でもね。かいせとか、はしびきみたいな人がいいなー」
はしびきは、滅多に出勤しない女子社員だ。
橋引。
念力を使うのだけど、消費体力が大きいみたいだから、あまり呼べない。
「ほら、俺らの孤独って、少し特殊だから。
似たような誰かが居てやっと埋まると思うんだよね。だから、そういうのわかってくれる人がいいや」
「なにそれ、あいつでもいいわけ?」
「かいせが好きじゃん」
「はぁ」
ため息を吐く。
「俺はお前が好きだけどな」
「ん……」
伝わる気配は、無い。
しばらく固まり、次に首を傾げ、ぎゅっとしがみつかれたというだけ。
よくわからないけど、とりあえず、警戒はされてないっぽい。抱き上げると、満足そうに胸に顔を埋めた。
「分からない。極端だ、好きじゃなくなったら、捨てる?」
「好きじゃなくならないから、大丈夫」
「二つしか、選択できないみたいで、怖い。俺を置いてく? ひどいことする? 要は、利用して、いらなくなる、どちらか?」
「話を、きーけー!」
両頬を掴み、顔を合わせる。きょと、としていた。
「いいか、そういうやつはな、そもそもお前をそんなに好きじゃなかったんだ。理想を描いてただけで、それが違ってたことを相手のせいにするだけ」
「……?」
「まあいいや。俺は、そんなことはしないから」
「信じておくよ。今はね」
背中に手が回る。ぎゅっとされている辺りは、一応の信頼はあるのかないのか。よくわからない。
「好きって言」
「大好き」
俯いているそいつの耳元にささやいてやると、かぁっと耳が赤くなった。予想外だったらしい。
「……っ!」
ばし、と背中をたたかれた。
「ちょっ、いたいいたい」
照れているのか黙ってもたれかかってくる。
こっそりと目を閉じて集中し、そいつの感情を読み取ってみた。
温かい、きらきらした、寂しい、苦しい、嬉しい、柔らかい、眠い。
ごちゃごちゃ散らばっている。どれも本当のことではあるが、断片的だ。総合的に自分がどうなのかはわからないっぽかった。
なんだか、パソコンのデフラグみたいだ。
ただ、俺が抱き止めたり好きだと言ったりすれば、なんだか甘えたくなる仕組みみたいだ。
そんな場面のときのそいつの記憶が沢山、浮かんできた。
「勝手に見るな」
足を踏まれた。
気付かれたらしい。
「いたーい」
「寂しいときにだけ、利用してるみたいで、癪」
「すればいい。いつでも、俺は、嬉しい」
「……んっ」
口付けられてそのまま押し倒され、だんだんとシャツのボタンを外されていく。
「するの?」
「声が聞きたい。困ったような声」
また、ピンポンと鳴った。
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