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釘
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初めて友達に裏切られたのは保育園の頃だろうか。俺が描いた絵を勝手に出されたり、小学生の頃、俺がやっていた係の仕事で、担任に報告したやつが、自分の手柄にした。
いつでもそう。
価値なんか、奪われたら、無いのと一緒。俺の価値は誰かが奪っていく。実力をつける努力以外、なんにも残らなかった。
俺以外じゃ有り得ないっていうものを持つ以外は、なんにも残らない。
だから、俺は自分の体質は嫌いじゃない。
奪えないから。
俺が死ねば、終わり。
あぁ、明快だ。
あまりにも。
『お前、気味が悪いな――消えろよ!』
向けられるその言葉を聞きながら、俺は思う。
俺自身は、俺のものだ。だから。
「なーにしてんの!」
後ろから抱きつかれて、淡々と返す。
「お前の枕に釘を刺してる」
「ぎゃー、何で刺してんですか」
かいせのベッドによじのぼり、羽毛をわさわさと引きずり出していたら、止められた。
「もー、ばかぁ! 色ちゃん、なにしてんだよ」
「愛情表現」
「もー……今日、枕なしかよ」
泣きそうな顔で、枕を眺めるかいせを見ながら、いい気味だと思う。
よくわからない。
憎みたい日と、好きでたまらない日が、交互にやってくるらしい。
「愛情表現、別の方法にしてくれない?」
「……」
黙って唇を奪う。
どきどき、した。
「こんな感じ?」
「そんな感じ」
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