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引き裂く
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「んで、なんで枕を引き裂いてた?」
「……」
「手を出せないようにプラモとかに鍵かけちまったからか」
「……」
ふい、と背中を向ける。 かいせは俺が何に対して 何を思ってるか知ってるはずだ。
だけど、なのに、どうして不機嫌なのかわからないのだろうか。
「あのなぁ。それでも枕は引き裂いちゃだめ。あれがお前の愛情表現じゃないことくらい、わかるんだぞ? いつも一緒にいるんだから」
「あぁ、もう!」
突然、声をあげた俺に、かいせがびっくりしている。俺は訳も告げずに、外に飛び出した。
最近、車が多すぎないか。なにかのイベントなのだろうか。
俺はただでさえまともに道路を見ていない。
沢山人が居る歩道はなるべく通りたくないというのに、近頃の渋滞ラッシュには、ものすごく歩行を阻害されていて不愉快だ。
少し前までは、壁に手をついて歩いていた。
今ではそれが無いとはいえ、空間認識能力がさほど高いわけじゃない。
向かってきた物や人に気付かないときだってある。だからだろうか。
苛々する……
ただでさえ通りにくい道をさらに狭くされ、挑発されているかのようだ。
この辺りは特に都会でもない。
だからこそ道にほとんど人が居なくて歩行も快適だった。のだが。
もしイベントなら、早く終わらないかな。
大事な歩行通路。
広いなら広い方が良い。さっさと退いて欲しいと思いながら、ふいっと顔を背けて歩く。
ビビってんのかと声がかかる。
ああ、もうなんでもいい。とにかく退いてくれ。
横断歩道を渡り、苛々したまま、行く宛もなく彷徨く。
ふと、耳元で無線が入る。
『おい、どこに居る?』
名乗りもしないし、ぶっきらぼうだ。
答えない。
『お前、確か』
答えない。
おい、とかお前とか、なんだかむかつく。
『戻ってこい』
答えない。
ばし、と電柱に肩が衝突した。景色は見えてる。
想定してた輪郭と、予想の幅が違っていたのか。
痛い。
目の前の、二つ目の横断歩道の辺りの渋滞から苛々が増してきて、思わず無線に返す。
「うるさいな、少し頭を冷やすから、話しかけるな」
クククク、と笑われる。
『お前またあれか、渋滞に苛ついてるのか』
かいせは相変わらず愉快そうだ。よくわからん。
「そうだが、なにか?」
小さい頃、誰かに、
そんなに車や他人が怖いのねと言われたことがある。
どちらに曲がるかわからない気まぐれなものが、固まってやってきて道を狭くする。
確かに、怖い。
単体なら少しは怖くない、気もするが、歩く道を邪魔される不快さは、あの人にはわからないだろう。
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