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03
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「じゃあ、週末に二人で出掛けようか」
と、女の声がした。何やら賑やかだなと思っていたら、玄関先に他人が二人。
藍鶴と……
あれは、橋引だ。
「俺を抜きにして、なにしてんの?」
まさか真剣に朝食をつくっている間に浮気に走るとは。
近づいて行くと、藍鶴は曖昧な顔で笑った。よくわからん。
橋引は、あ、おはよう!と明るい声ではしゃいでいる。
「おはよう。あのね、色ちゃんがね!」
「……はっしー」
「ごめんってばー」
「なになに。浮気の相談?」
色が、ふいっと目を逸らす。あー、これはこれは。なにか隠していらっしゃるな。
「こっちを、見ろ」
無視される。
「……」
ハイハイわかりました、
と、彼女の方を向くと、やけに真面目な顔をしている。
「ああ、かいちゃん。
無線から、情報が来たの」
なんだよ。
「……急に仕事の話かよ」
がっかりしていたとき、こそっと、耳元でささやかれる。
「あとね、色ちゃんは、痛いとか怖いとか、鈍いところがあるから気をつけてあげて」
「あ、ああ」
「自分が辛いのかどうかたまに自覚出来ていないみたい」
「……ああ。それは俺も、薄々感じていた」
どうしようもなく辛くなったときには。あいつはきっと俺にさえ、頼らない。
しねと言われたら『うん』と言うし、きえろと言われても『わかった』と言ってしまう。
それに何の疑問も持たない。彼にとっては、
それらの言葉は、ただの日常会話。
「あと、はい……」
彼女が手を出してくる。掌にあるのは、引きちぎられた小さなペンダントだった。
ただ黙って、それを握る。目を閉じる。
さざなみが聞こえた。
ああ、海は嫌いだ。
「ざっくりしたことしかわからないが、まず狙うのは海の見える範囲だな。それから……これは、海外か? 英語の文字が浮かんでくる」
それ、から……
頭が痛い。
痛い。
痛い。
痛い。
「こんなん、ばっかかよ」
チッと舌打ちをするが、気は紛れない。
「なにか見えた?」
「念力が必要なのは、何らかの下じきになった、持ち主をつれてくるためか」
橋引が頷く。
「そのペンダントも、引きちぎられてるでしょ。唯一持ってこれた遺品なの」
「なるほどね」
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