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歯止め
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「自分でやるから痛くないよ。そうだとしても、かいせは痛くないんだから、大丈夫だよ」
こいつ、なぜ俺を気遣う。
「かいせは見るのが怖いんだよね? 平気平気。だって自分でやるだけだもん」
橋引は我関せずって感じに、向かいの席でコーヒーをすする。
「よくある話じゃない。
寂しさを埋めるために、痛みを欲しがるのはー」
とか言って笑っている。
「いや、でもさ!」
「本人は、自分を憎んでる。壊れてるのよ。あの子は。怒られたり、痛かったり、そういうのが足りないまま育って、自分で補ってる。立派じゃない。自分がしゃべるのさえ、好きじゃないのかもね。自分の一挙一動に、イライラするの。わかるわ、私もたまにある」
「お前ら、なんでそんなに自分を追い込むような、ハードな生き方を」
「追い込まなきゃ、歯止めが利かないからに決まってる」
彼女、がキッと鋭い目つきをした。普段は温厚そうなのに、ときどきやけに、こんな風になる。
「歯止め?」
「彼は、不安がひどいのよ。それも、尋常ではないレベルで」
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