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話
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そこからの話は、あんまり考えたくはない。
嘘を守り通す世界の中で、真実は消えていった。
嫌な夢。昔の夢。
ぎゅ、としがみつくと、かいせが痛たたた、と声をあげて、意識が戻ってくる。
「どしたんだよ」
布団をかぶっているのに身体中が怖いのと寒さで震えている俺を抱き締めて、そいつは心配そうにしていた。
怖くて涙が流れてくる。なにが怖いかわからない。不思議と家族は今も大事に思っている。
「だ……いや、いやだ、やめてください」
もがいていると、腕をつかまれ、無理矢理起こされる。
「大丈夫、大丈夫だから。な?」
わけがわからなくなり、暴れていたが、やがて疲れて布団に潜って、ふと気がつく。
「――――え。
………………今。何時」
「昼の12時ー。仮眠ですよー活動は夜中」
「……そうだっけ」
「寝起きは幼くてかわいいのにな」
はぁ、とため息をつかれて首をかしげる。
「かいせ」
「いきなりどうしたの」
「そういや、かいせの名前、絹良だよね。きぬら」
「ああ」
「そっちで呼んでいーい?」
「いいけど」
「呼ばないけど」
「俺で遊んでる?」
「いちゃいちゃ、しよ?」
「はぁ……」
口付けられながら、何かを思いだしかけて、慌てて頭から掻き消す。
だめだ、だめだ、だめだ。
「寂しいな」
べたっと肩に乗りながら甘えてみる。
かいせは、クスクスと笑っていた。
「お前さ」
「んー?」
「悪夢で、寝れない日が続いてない?」
「最近はマシだよ」
失ったものばかりだった。
だけど、代わりに得たものがある。俺の話を信じてくれた、あの場所、それから彼だ。
まるで運命みたい。
彼も『それ』だなんて。
「俺を頼ったりしないのか?」
「んー。だからほら。甘やかして欲しい」
「そういう、一時しのぎの話じゃなくてだな……」
「かいせは自分の仕事しててよ。頑張ってるなあと思いながら、俺は見てるからさ」
「最近、目、合わせてくれないけど?」
「それは。ほら。他人と目を合わせるの苦手なんだ。むずむずして。鏡見るときも、たまにむずむずする。あと、お前寝顔とかたまに撮ってるだろ」
「……バレてる?」
「俺にはくれないのに、不公平」
むっ、と両手を広げると、彼は苦笑した。
「お前は、案外公平にこだわるよね」
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