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屋上
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ぼんやりと、頭に念じると、あいつの居場所がわかった。
スーパーの屋上。
高いところが好きなのだろうか。ほんとに猫みたいなやつだな……
コートを着込んで外に出る。夕飯はお預けだ。あいつは。
なにも求めていない。
誰も求めていない。
何かを探している。
何かを求めている。
けれど、それが何なのかは、わからないのだろう。
走る。
最近はあまり走ってなかったから息があがった。なんどか屋根を伝い、階段を飛び、町をショートカットしながら、目的地に向かう。
スーパーの近くのビルから、そこの屋上に着地する。
時間はもうだいぶん暗かった。
「あ、きたんだ」
そいつは、ぼんやりと空を見ていた。
「きれいだねぇ。星」
後ろから抱きつくと、だいぶ冷えていた。
体温が低いやつなので、彼も、とても寒いだろう。
「好きとかはわからない、星は、綺麗だと思う」
「俺は?」
「は?」
驚いた顔。
そして俺は真剣だった。
「橋引に、教えてもらうこと、無しにしない?」
「……また、読んだ」
「ごめん。でも」
「顔、つめたい、ね」
温かい、手のひらが頬に当たる。すり、と頬を寄せるとそいつはクスクスと笑った。藍鶴色は、勝手にひょいひょいと下に降りていく。
身軽なやつだ。
追おうか迷いながら立ち尽くす俺を放置して、そいつはどこかに消えていく。
「はぁ……」
さっぱりわからない。
全く、わからない。
今度の週末の全容、細かく橋引に聞いてみようかな。
「あ、そうだ。かいせ」
ビルの下方から声がかかる。
「星、好き?」
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