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眠
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・・・・
「……ん」
抱き合っている間は幸せだ。温かくて、眠たくて、優しくて。 だけどいつのまにか横たわって、かいせの腕の中でうとうとしながら、ぼんやりと、いろんなことを考えてしまう。
考えると、だめなのだ。
脳裏にばぁっと広がる、フラッシュバック。
恋絡みで妬まれた話。クラス中にからかわれた話。家族が、家族なのかわからなくなる話。自分が自分なのか、わからなくなる話。
――いろんな人や物によって、価値観が蹂躙され粉砕されつくされた回路たち。信じていたものが何一つとして、正しくなかったことしかなかった。
その頃は何一つとして、俺を守ってくれたものが無くて。
だから。
『お前がやったのか』
ちが、う……
とん、とん、という優しいリズムが、背中を叩いている。うとうとしたまま、それを感じていた。
人を、想ってはならない。優しさには、見返りを求めてはならない。
「かいせ」
「んー?」
「好き」
「ああ。うん」
少しかすれた、優しい声。俺たちはたぶん最初からなにか欠けていて、与えるものが愛であっているのかさえ判断出来ないまま、大人になってしまった。
それでも、形だけでも。
「ねぇ」
床に横たわったまま、俺は言う。かいせは黙って俺を見ていた。
「俺が、かいせを、どれだけ好きなのか、知らないでしょ」
「あはは。どうしたんだ急に?」
かいせは、一人大笑いする。まぁ、そのくらいの距離で、ちょうどいいか。
ぐっ、と無理矢理顎を上向かせる。
それから、唇すれすれで囁いた。
「茶化さなくても、ちゃんと受けとれ」
「はい……」
別な感情まで読んだのか、かいせが真っ赤になる。俺はあまり赤くならないから、なんだか珍しいものを見ている気持ちになってしまう。
ダイレクトに伝わるそれは、自分の言葉がちゃんと届いていることを、信じさせてくれるようでもあった。
ぐっと腰を引かれて、彼の上に被さる。
「お……っと?」
「色ちゃんは、ほんと、可愛いな」
「可愛いは、あまり嬉しくはない」
「そうか? 嬉しい、が伝わってくるけど」
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