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願う
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「んん……」
ぎゅ、と抱きつかれて、自分が寝ていたことに気がつく。色は俺に必死にしがみついていた。
こいつは、よく、苦しそうに眠っている。
「よしよし」
手触りのいい黒髪を撫で回す。よく寝てるからか、反応はない。
こいつは、俺と少し似ていた。
普通とは少し違う知覚を持つ人間というのは、よく無実の罪を背負うのに適役として選ばれるのだ。そして、色は、その特異性からそうとう疑われやすいらしい。
すべて冤罪。なのに、誰も助けてくれなくて、自分の頭で沢山考え、どうにか身を守ってきた。
普段そこまで気が強くないのもあって、意外な一面として、やたらと広まるだけ広まってから解放される。その無力感、あまりの虚しさ。
世界のあらゆる他人を信じていない彼は、
「もう少し周りが頭が良かったら、俺みたいに困るやつが居なくて済むのに」
といつか言っていた。
なんだか、急にそういう気分になってきたので、寝ているそいつの衣服をひとつずつはだけさせていくことにした。
おれの読みでは、まだ起きない。
「無防備に寝てるから悪いんだぜ」
甲斐性無しだからじゃなくて。いろんなアレが、安定しないから。
今日はいつもよりかは、安定してる。
俺の『回線』は、人より多くて頻繁に疲れてしまうから。
以前、誰かから、そんなに感受性フル稼働で、よくまぁ他人といちゃつこうという発想ができるなと言われたことがあったが、だからこそだ。
合わせられるチャンネルの主導権くらいはせめて握っておかねば、いつ、気持ちが暴走してしまうかわからない。
知っている大好きな誰かにだけ、使えたらいい。好きなものの情報だけでおれ自身を満たしたいのだ。どうせこんなものがあるなら。
そう、願うからこそ。
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