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しばらく夢中になって、肌白いなーとか、見ていたせいなのか。
「なにを、している?」
気づいたときには藍鶴色が、ぐいーっと俺の頭を掴んで睨み付けていた。やや涙目である。やば。忘れてた。
「えっ。あの」
固まる俺を見て、やがて状況を理解したらしい。少し照れながらはだけていた服を着直す。
「起きてるときにしてくれ」
「ごめん」
「今起きた」
「ありがとう」
「礼」
ぐい、と引き寄せて、抱きつく。そいつはきょとんとしていた。
「俺が好きだね」
「すき」
「ちなみにこれ、R18シーン全カットだから」
「えっ嘘」
そいつは、クスクス笑う。
「ごめんね。でも、かいせが一番好きだよ」
「なんだよ、それ……」
「ん? なんだろうね」
「なあ」
そういえば、と思い出す。
「ストーカーとかって、いつから……」
「学生だったときは、わりとあった。何がいいのかねぇ、俺の」
――頼るだけ、利用されるだけじゃないのかっていう疑心暗鬼がいつもあって。それが、輪をかけて、感情の邪魔をする。
それなのに、下手に媚びたり笑ったりしないそいつになぜか人がやってくる。
そして、そのたびに、利用され続けた。
好意と、利用。
そんなそいつの感情を読みながら、ぼんやりと俺は考えていた。
こいつは、自らを守るために、自分の時間をすべて止めてしまった。
らしい。
「……ふふふ」
「何に笑うんだよ」
好きだよ、とそいつは笑った。悲しそうに。
「ちゃんと、背負わなくちゃならないよね。わかっているんだ」
かいせは、自分の話はあまりしないね、と。
心の声が聞こえた。
まあ別に、いいんだけどね、と。また、聞こえた。
「どうにか借りた奨学金の返済と、他人にやたらと執着される恐怖。どっちも、おれが自分自身で稼いで自分自身で、他人をはね除けられていたら、良かった」
こいつに引き寄せられる人は、時折、あまりに異様なのだと俺は知っている。まるで、何かに憑かれたかのようになるのだ。
あれは。なんなのだろう。
「ろくにお金無いのに、無理をしたし、俺の態度が漬け込まれやすかったから、バチが当たったんだろうね」
兄が、唯一、名前と同じでお前は色の感性が良いって褒めてくれたんだと、そいつは言う。
得意気に。
「でもやっぱ、どのみちお金かかるしさ、返済できなきゃ無意味だし、仕方なかった」
バイトとか働こうとしたけど、前にも怖い目にあってて、とか細々した言葉が沢山流れて漂っていたが、圧し殺していた。
「なぜか俺はやたらと、汚い人間を引き寄せる才能があるようで」
ネタみたいだろ?
『口に』はしなかったそれが聞こえてしまうなど。なんて罪深いのだろう。
「ま。細かいことはあまり言いたくないけどさ。世の中お金なのかね。ふふっ」
まるで後半は、言い訳のようだった。好意に怯え、執着に怯えて過ごしてきたことへの罪悪感のようだ。
思わず抱き締める手に力がこもる。
痛い、と言われた。
痛い、という感情も雪崩れ込んできた。
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