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世界
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理不尽なことも多い会社だがここは勝ち負けがない世界だ。ただ感性にだけ従って、もがき死ぬまで走る。
そんなシンプルな世界だから俺は気に入っている。
感性を研ぎ澄ましさえすれば、自然とどうにか結果になる、他に出来ることのない身としてはこんなありがたい場所はないと思う。
誰かを意図的に蹴落とすだとか、実力が足りないだとかが起こらない、全て自己責任であり、努力ではなく、実力ではなく、どれだけ全力だったか以外が、問われはしない。
生きることが、全て。
自分自身と戦い、自分自身が狂う。
他人に酔い、他人を貶すより、ずいぶん素晴らしい。
ある日の依頼は、病室で俺の単独だった。それが終わったあと、廊下を歩きながらぼんやりと今日会ったあいつらは元気かなと子どもについて考えた。
そしたら、急に、遠くからぞわりと嫌な空気が流れてきた。
なんて表せばいいのかわからない。
離婚前だった両親の言い争いのときにも感じてたモノ。
身体が急速に冷えて、足を動かすのもうまくいかなくなる。町を歩く近所のおばさんの井戸端会議からも滲みでていたりするそれは、大抵が、強い嫉妬や憎悪の固まり。
嫌だ廊下を通りたくないと、俺はその場に立ちすくんだ。
こういう場所は、フラストレーションが溜まりやすいらしくて、空気が少し淀んでいるときがある。
今日の依頼も終わったし帰るだけなのにと思うが、気味の悪い空気が側をまとわりつくせいで、恐怖で動くことが出来ない。
昔……リストラ前だったなら、携帯とかで音楽を聴いてまぎらわしていた。だが、今は機関だかに携帯が管理されてるみたいでそれに制限がかかってるせいで、外で聴くことが出来ないのだった。プレーヤーを買いに行くことも出来やしないし、通販もどんなやつが来るかわからないから使うのは控えるしかなくなった。
力を売りにしたくは無かったがそうした以上は今でも周りに隠さないと俺たちを利用したいやつらは沢山いるみたいで。危険が及ばないようにしなくちゃならないとか言われていた。
そしてその力があるからクビになった。
理不尽だ。それに利用などと俺は好きなものにしかアンテナを張れないので正直、鬱陶しいだけだから、利用精度があがるわけもない。
何をとってもイライラする……
「周りはうるさいし対策も出来なさげのに、俺を責めても困るっての」
なんて毒づくが、どうにもならなくて仕方なく、藍鶴に連絡を取る。
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