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「ああ、何」
しばらくしてそいつが電話に出た。
素っ気ない応対だが安心する。
「頼む、迎えに来てくれ」
まあこいつはこいつでかなり雑念が寄ってくるんだが。
でも、一人でそれに耐えるよりはマシな気がした。
少しして、歩いて来たそいつは、黒いカーディガンを身につけていて、なんだか大人びていた。
「なに、急に」
「いやぁ、なんか、周りうるさくて、怖くて。
いつも誤魔化すように聞いてた音楽も、つかえなくて聞けないからさ……」
ここから動きたくない、と言うとそいつはわかったと言って、少し距離を開けた。
「歯は、食いしばれよ」
「え?」
蹴りが飛んできて、とっさに避ける。
「ここびょーいん!」
「だから?」
だからとは。
「手伝ってる。痛い間は、怖くないだろ?」
あ。本当だ。
ひょいひょいとかわしながら、ここの客にはなりたくねぇと気合いを入れる。
やがて空気がざわついて、はっと我に帰った。
無意味に二人とも汗だくだった。
「帰るか」
「ハハハ、いい運動したなぁ」
自分と他人が同じだと思っているやつより、ずっといい。
怒りたいときに怒る、泣きたいときに泣く、ヘラヘラしない、そんなのは、
ただの人間がやることだから。
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