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鬼じゃないよ
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「やること、ねぇ……」
二人で歩きながら、思う。
いつから、こうなったんだろう。
いつから、こんなに、染まってしまっているのだろう。
こんな、リアリティすら歪む、感覚世界に身を置くようになった人たちは、どこかしら、こんな会話を、少し嘲笑うような、受け止めきれないような感じで口にする。するしかない。
笑うフリくらいしてないと、痛みが、ひどすぎて、やりきれない。
「俺らって、怒るのほんと苦手だよな」
「もうっ! とか言えと? 冗談は牛にしてくれ」
傷ついた心を使い、また感情を浪費するのと変わらない。
一度傷ついたのに、また傷つくのと変わらない。
怒っているつもりでも、信じてもらえず、泣いていても信じてもらえない人のために、俺は居るんだと思う。
「心を、読めたらさ、わかるのにな」
なんとなく、口にした。
「痛いとか、悲しいとか、怒ってるとか、表情や態度じゃなくて、みんなが、みんな自分へと流れ込んできたら、わざわざ表す必要ないのにな」
「手間だと思う?」
色が、こっちを覗き込んでくる。手を繋ぐ。
「思う。色みたいに、無表情のが、俺は読むことだけに集中できて、関わりやすいんだぜ」
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