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女
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他人が他人を好きになる姿が嫌いだ。誰であっても嫌いだ。
心が無いと出来ない事全てが嫌いだ。何かを思う事そのものが嫌いだ。何かを思うことをずっとしなきゃいけないのが嫌いだ。奪われない心があることが落ち着かない。
少しでも心になにかがあると、モヤモヤして、それが落ち着かなくてイライラして、耐えられなくて、感情らしいものがあると、いらいらして、無になっていたくて、耐えられなくて
――――思えば、何かを思うと言う行為そのものが詰みで、
世界中に散らばった心が、一斉に思えば、何も、統合できないということで。
みんな部品になってバラバラになったら良いのにって思う。今も思う。
「あぁ、女っていっつも面倒事起こすからな、この前だって知らない女が勝手に上がり込んで来たし、すぐに嘘を吐いて、泣くのも得意だから! また、演技、演技!演技!」
何とかケントがそう言っているのを聞いたのが、いつだっただろう?
確かにそんなことを彼は思っており、それを、外からも聞こえる音量で叫んだ。
「…………?」
その日の夕方。
俺はいつものように、会社から出て、適当にふらついていた。
ずっとビルの中に居ると、平衡感覚がおかしくなる。重力が、身体にかかっている実感を忘れそうになる。だから夕方は時々、下まで降りて歩いて居た。
のだが、ちょうどその時間に近くのアパートでもめ事が起きていた。
「ケント、何してるの!? やめて」
ワンピースにサンダルを履いて出てきた女性。
「ほら、こいつは、何もしてないだろうが!」
ひょろ長い男の首を猫のように掴みながら、女性に指し示す体格の良い男性。
大声で言う必要があるのかも、何の為にやっているのかも、まったくわからないのだが……いや、やっぱりわからないな。
「女って、いっつも面倒事起こすからな、この前だって知らない女が勝手に上がり込んで来たし、すぐに嘘を吐いて、泣くのも得意だから! また、演技、演技!演技!」
あははははは! と響き渡る声。
「なぁ、もう、何もしてないだろう?」
掴まれている男が、涙目で頷くと、なんとかケントは見下すような鋭い視線で
彼女を見下ろした。
「ほら! セクハラだか何をされたんだか知らないけど、どうして許してやらないんだ!!? 今何もやってないだろうが!!!」
そもそもなんであんたが間に入ってるんだ? とか、今とか昔とか関係無いのでは?とか、傍からみれば言いたい状況であったけれど、別に口を出すことでもないので黙っているしかなかった。
「何をされたんだ? ほら! こいつの前で言ってみろ! 調べて来てやるから!」
「…………?」
ちょっと。いや。だいぶわからない。
2022年8月6日18時37分
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