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めぐみ
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「誰も、私の心を、心だと認めてくれない」
だれも、俺の心を、心だと認めてくれない。
「みんな、あの人の被害に合った人は、みんな同じ被害者の名前で呼ばれる」
みんな、あの人の被害に合った人は、みんな同じように『未来』と呼ばれる。
そこに、心があったはずなのに。
「そこに、私が居たはずなのに。被害者はみんな『めぐみ』って呼ばれて居るんですよ」
・・・・・・・・・
薄々予想していたが話を聞くうちに
これも、ブログに関わる事件だったのだが、でもあまり他の人に言いたくないとのことなので、聞くだけに留めて置く。
ただでさえちょうどその時期は、誘拐を含めネットの出会い系などで知り合った男女の事件が相次いで起きており、動機と結びつけて語られた。
世間の親世代を中心とした大人たちは『これだからネットは』という目を向けていたし、PTAなどで出会い系が議題に上がるのは勿論、フィルタリングなども盛んに叫ばれた。オタク文化などと並んで悪印象がつきものだった。
たとえ他人だとしても『醜聞』を避けたかったのだろう。
作家性をこじらせた「ジン」の執着がブログに移って行きつつあったその頃のことだ。
「ジンって、知ってる?」と聞いてみた。
「影法師っていう名前のブログ……もしかしたら知っているかもしれないけど。その頃に『ジン』とも知り合って……その頃は西崎ジンって名乗っていたのかな。このタイトルは、シチカちゃんが決めたものだけど」
「あぁ、違うんです、個人のブログは歌を――――そう、歌を……辞めちゃったんですけど……そのあと、ジンが流行り出して」
「なるほど」
「影法師はみんなでやってる交換日記みたいなものです。特に変わったところはありませんね。理由は細かくはわからないけど、急に私がストーカーに合うようになって、その頃にちょうどジンが歌うようになって。
彼、大体の内容が『陽炎』や『影法師』に拘ってたので
なんて言えば良いのか。どことなく不気味で、目が離せなかったっていえばいいのかな。何かを先回りするみたいな……まるで見張られているみたいな歌が多くて……」
「で、ケントは?」
「実は、私も聞きたいくらいなのですが、気が付いたらよく家の前をうろうろしてるとしか」
「うーん……」
「西崎ジンと、ケントの付きまとうタイミングは似てて、同一人物なのかもってよく思うんですよね。でも、ジンは音楽イベントでは顔出ししてるし。あれが、影武者だったら話が別なんだけどなぁ」
しばらく話して、アパートに送り届ける。
これが、『彼女』と話した最期の記憶だ。最期、最後に言ったことといえば、『ぜんぶめぐみさんにされてしまう』という事だろうか。
ブログに書いた内容を全部めぐみさんのこと、というタグを付けられてしまうのだ、と。ジンやケントは此処に居て、確かに彼女を脅迫していて、それでも表に出る話題、はなぜか彼女のことではなく『めぐみさん』になってしまう。
実はあらゆる、世界中の被害者が『めぐみさん』と呼ばれているのが本来の被害の実情なのだという。
めぐみさんが何者で、ジンやケントが何の為に一般の他人にまで絡んで『めぐみさん』を量産しているのか。
2022年8月12日5時20分
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