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未来ブログ
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「閉鎖するかな、って考えてたときだったんだ」
「未来ブログ」として流行っていった「それ」だったが、
俺はあまりの影響力に怖くなった。また誘拐が起きてしまう……。
単にそれだけの話では無かった。もちろん事情を話す機会など無いのだが、裏の事情に無知な素人が、流行に合わせて中身を転売・盗用するようになったことで『中身だけ同じ』為に頻繁な二次被害が起こる。
俺自身はジンと交流が深かったわけではないが、ニュースなどを聞く度にその未来は直観的に感じるようになってきた。『ジン』は、盗用した彼らを標的に、徹底的に誘拐を繰り返すだろう。どこかに自分たちの都合の悪い情報の持ち主が居るはずだと、片っ端から。
彼らにとって一般人は周りが思っている以上に消すのが楽だ。個人情報さえ手に入れば、あとは些細な問題だろう。
今でも思うけれど、
こんなことになるとも、此処まで執念深いとも思って居なかった。
『自分の書いたものが大事にされた事はない』。俺には無価値しかない、何を書こうが不気味な怪物の気味の悪い自己顕示でしかないと、そう
思っていたから、そこまで注目を浴びてしまうものだという認識が全く無かった。
俺は怪物でみんなと違う。周りの迷惑にならないように、余計なことは喋らず、空気を読む、それでもこっそり何かをする、それだけだったのに。ネットにすら居場所はないし、怪物は怪物らしい。
どんなに素性を隠して周りを巻きこまないように努力しても、存在そのものが既に異端だった。
理解が甘かったが起きたことはどうしようもない。
俺の情報にたどり着くのに時間がかかる間に、一旦休もう。
せめて、まずはこれ以上の転売を食い止め、余計な被害を減らさないと。
「前に在った、クーラーボックスに遺体が入れられて送られる事件のときも、そう思って、」
ある日、おれはついに中身に鍵をかけ、ハッカーくらいにしか手を出せないようにし、ブログにも、ここを閉鎖する、と宣言する。これ以上続けても、何も知らない民間人の方が危険だ。
「そう、思って、閉鎖したのと同時に、ブログで未来を当てる占い師『アド』などを筆頭に『そういった』占い師が表に出るようになった」
まるで、裏側に引っ込まれたら困るみたいに。矢面に立たせ続けたいかのようだった。りくさんは、懐かしい思い出話のように目を細める。
ほとんどつまみに手を付けていないが何か食べたいものはあるか? と聞かれたのでキャビアがいいなと答えた。彼はただ笑った。
「占い師、えぇ……あの方がうちへ来たのも、その余波というか、そうでしょう。あのときは、『そういった』人がよくうちに来られていましたよ。みんな未来が見えるとおっしゃって、しかし、彼ら自身がそこまで際立って異端ということでもありませんでしたからな、大方帰しましたけれど、そのときはまだ、ジンは、少なくとも表立っては見ませんでしたね」
「あいつ目立ちたがる癖に、そんなに現実で表には出てこないから」「……でしょうな」
だから俺は気付いた。
「ケントが、彼女との間に挟まって騒ぎ立てたのも、俺が閉鎖すると『アド』を表に立たせたかったのも、恐らく同じような理由だろう」
あのとき、居なくなった『彼女』が言っていたことの意味。その先にあるのがジンがやっていることと、同じようなものだと思った。
「一度目立ったものを、矢面に立たせ続け、それを自らの勢力に取り込みたいんだ。『途中で止めたのなら、そこから成り代わる』ジンたちは恐らくそのチャンスしか狙って居なかった」
撤退を許さず、四六時中広告塔にする気だ。だから、近所から『別の男』を連れて来てそちらとも関わりを持った。
「たぶん、誘拐とセットだろうな。前にも同じことをしていると思う。
本人がブログを止めたとしてもその兄弟や同級生、あるいは身近で情報を取得できる人物を表に立たせている。途中まで本人なわけだから、一見するだけでは気づかれにくい。出版関係とかだと、住所も近い方が偽装しやすいしな」
「奪い取った後、成り代わり、自分の勢力側に遺産と地位を独占させる。その目的に調度いい人物を表に立たせる……と、ケントも『後見人』の為に、『加害者』を呼びつけて外で脅迫していたのですね」
2022年10月7日21時12分
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