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超能力
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そっか。
俺は、俺で良いんだ。
此処に居て良いんだ。
この場所は――――
俺を、怖いって言わなかった。
◇◇◇
『 社会的大ヒットを記録した ――――先生の 「 」ですが……
これ実は、今年起きた連続殺人事件がモデルになっているんですよね。』
学校に行ったある日。世間であの本が流行った。
クラスの子がそれを所持していて、興味を惹かれた俺は気まぐれで話しかけた。
――――そんなものが面白いなんて、変わってるね。
普段他人と必要以上に話したがらなかった俺が、珍しくノリ気だったのもあって、すぐに教室の席に人だかりが出来て、皆が話に注目した。
『界瀬君、こういうの読まないの?』
その子が善意で聞いてくれた質問。
「嫌い。その手の本は、血みたいなにおいがするから、下手なホラーより怖いし」
俺はかっこつけでもなんでもなく、当然のように言う。
「だいたい、起きた事件をそのまま描くなんて、全然、謎なんかないだろ。殺したときの気持ち悪い欲望が並べてあるだけでさぁ」
当然のことを言ったつもりでいた。
段々と、周囲が青ざめていくのがわかったときに俺はようやく、これは言っちゃいけないことなんだと気付いた。
ちょうどそのとき通りがかった男子が、『そ、そりゃないだろ。ニュースでは別の名前の奴が、既に容疑者だ』と助け舟を出してくれたのだけど、
「なんで? その人は違う」俺はあっさり否定してしまう。
みんな、わかってて、先生の作品が読めなくなるのが嫌だから庇ってるんだと思っていた。
瞬間――――
絶叫があちこちに木霊した。
クラスの女子が、あるいは男子が騒ぎ出す。
『何!? 何、あんた、怖い……!』
「だって、その本、実際の殺人事件なんでしょ? だって、ほら、表紙から、血の匂いがする。それ、もってると、よくないと思う」
『いやぁあああああああああああああああ!!!』
「何で……そんなに、怯えるの?」
みんな、面白がってたんじゃなかったの?
そんな、傷付いたような顔しないでくれよ。
俺はただ、みんな、こんな怖いもの、よく読んでるなって。
『まだ、犯人捕まって無いのに! 怖い事言わないでよ!』
隣の席の女子が、怯えて耳を塞いでいる。
誰かが泣きだした。
『こっっわ! お前って、バケモンみたいに色が白いし目もなんか変だし、バケモンの血でも入ってるんじゃね!?』
誰かが、庇うように言った。
『そうかもしれん、怖ーい』
誰かが笑う。俺を批難するように言った。
無関係な見た目や言動まであげつらわれてしまって、俺の周囲から人が離れていった。
幸い、それだけで直接的ないじめに発展することは無かったけど、
それでも、『みんなと違う』という心に刺さった棘が抜けなくって、
2024年1月9日4時45分
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