アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
あったかい。
-
春side
あれからどうやって家に帰ったのか覚えていない。でも気づいたら自分の部屋のベッドにいた。夢だと思いたかった。でも、身体中についた痕は幻なんかじゃなくて俺の胸を締め付ける。
「…学校…行かなきゃ。」
朝ごはんも食べずに俺は制服に着替えて外に出る。正直行きたくない。でもおばあちゃんが払ってくれる学費がもったいない。…まぁもうそんな記憶はないんだろうけど。
教室に入ると騒がしかった教室が一変。みんな俺を見てコソコソと何か言っている。俺の席には多数の悪口。
今でもこんなことする人いるんだね。なんか悲しいを通り越して感心しちゃう。
「春、おはよ…って、なんだよこれ…。」
俺よりも少し遅くに登校した流鬼は俺の机を見て言葉を失っていた。
「…おいっ!!!誰だよ、こんな…馬鹿みたいなことしたやつ!?」
「…流鬼、いいよ。別に。俺は気にしてない。」
「春が気にしなくても俺が気にする、人間として最低だと思う。写真なんて今の時代加工だろうが簡単にできるんだよ、あんな写真証拠にもなんねぇ。…なのに馬鹿みたいに真に受けて、…恥ずかしくねぇのかよ!?」
「流鬼…もういいから…。」
「…春、いくぞ…。」
「…え?」
「こんな腐った奴ばっかの教室、反吐が出る。」
そういうと流鬼は扉を乱暴に開き俺の手を掴んでそのまま教室を出た。
廊下を歩いている時もみんな俺を見ている。クスクスと笑う人もいる。軽蔑の目で見る人もいる。…やった覚えのない、事実無根のことで。
「…蓮も信じてくれなかったのか?」
「…信じてくれるわけないよ。…俺のことなんて興味ないんだもん。」
「春…。」
「蓮は、俺のことよりも…悠人くんの方が大切なんだよ。…面白くもないし我儘でめんどくさい俺なんか…捨てられて当然だよ…。」
「そんなことねぇよ!!春は、いつも一生懸命で、誰よりも優しくて……悪いところなんて探す方が大変だよ。」
「ありがとう、流鬼。…流鬼がいてくれてよかった。」
「…なぁ、春。その傷何?」
「へ?」
ルキが指を指す首には昨日の痕が残っていた。
「あ、…いや、これは…蚊にでも刺されたかな…。」
「…春。俺は春の親友だって勝手に思ってる。春のわがままなら何でも聞けるくらい自信ある。…だから春も俺のわがまま聞いてくれないか?…隠し事はされる方が傷つくんだよ。」
「…流鬼…。」
「春からしたら話したくもない辛いことかもしれないけど…でも俺は嘘は聞きたくない。」
「…ごめん、流鬼。」
捨てられた子犬のように俺に縋る流鬼を見てこれ以上誤魔化すなんてできなかった。
昨日あったことを隠すことなく全て流鬼に話した。
「…でも俺が悪いんだ…俺が…。」
「…春、ごめんな。」
話終わると流鬼は俺を抱きしめた。力が強くて痛いくらい。
「気づけなくてごめん、一人にしてごめん…!辛かったな、苦しかったな、痛かったなっ…。」
「そんな、こと…。」
涙が止まらなかった。あったかい。久しぶりに人の体温を感じた。
「…そいつらの名前分かるか?」
「名前…はわかんない…でも学年なら…ネクタイの色が違ったから…多分三年生。…えっと…その襲われてる時に山内?とか聞こえたけど…。」
「…わかった。ありがと、春。今日から俺と帰ろうか。」
「え?」
「あいつらに呼び出されても行かなくていい。」
「で、でも…。」
「大丈夫だから。あと…あの写真の件も全部なんとかなる。だから笑ってくれ。」
そう言ってもう一度俺を抱きしめた。
優しく俺を抱き締める流鬼が腹の中では怒りで震えているのを俺は全く気づかない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
21 / 22