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「小糸。昨日は」
俺が話しかけながら近づくと、小糸が立ち上がった。
「鈴賀。昨日はごめん」
小糸は俺に向かって深々と頭を下げた。
「ちょっと家族と喧嘩してイラついてたんだ。せっかくお前がノート届けてくれたっていうのに。俺、感じ悪かったよな?本当にごめん」
小糸は話し終えるともう一度頭を下げた。
俺は自分が謝ろうと思っていたのに予想もしていないこの展開に驚き、慌てて首を振った。
「ううん。俺の方こそ小糸の都合も考えずに、いきなり訪ねていってごめんな。非常識だったよな」
「いや、俺のほうこそ」
「いや、俺が」
お互いそう言って見つめ合った時、どちらからか吹き出した。
二人とも少しの間声を立てて笑い、俺は見尻に滲んだ涙を拭った。
「とりあえず、昨日のこと許してもらえて良かった。それにしても、よく俺の家分かったな?」
「ああ、本条から教えてもらったんだよ。小糸が清里の裏手に住んでるって」
「そういえば本条とそういう会話したことあるかも」
小糸が席に着き、俺は定位置の前の席に座った。
「それでさ、あの、今後もこういうことあるかもしれないからさ」
俺はごくりと唾を飲みこんだ。
「連絡先教えてくれないかっ」
やばい、噛んだ。
これだけの言葉なのに、上手く言えない自分が恥ずかしかった。一緒に笑い合った後の雰囲気の中ならいけるかもと、勢いで言ってしまったが、小糸は迷惑だと思ったかもしれない。
そろりと顔をあげると、目の前の小糸は既に片手にスマホを持っていた。
「ラインでいいよな?」
「え…うんっ」
俺は急いで自分のスマホを取り出し、連絡先を交換した。
信じられない。自分のスマホに小糸のアドレスが入っているなんて。
さっきまでは、もうこんな風に二人で過ごすことも無理かもしれないと絶望さえしていたのに。
俺は小糸の連絡先を指でなぞり、その指で自分の唇もなぞるとふふっと微笑んだ。あまりに嬉しくて無意識の行動だった。
「それ、わざとやってんの?」
小糸の言葉に顔を上げると、彼は無表情で俺を見下ろしていた。
「あっ、ごめん」
あんまり嬉しくてにんまりしてしまったが、気持ち悪かったかもしれない。
俺は自分の締まりのない口元を掌で覆った。
「たまにさ、鈴賀が俺のこと好きなのかもって勘違いしそうになる」
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