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「あとは若い人たちだけで楽しんでくださいませ」
料理を作り終え、時間になると次子さんは頭を下げて、そう言った。
俺はそんな次子さんに近所のケーキ屋で買ったクッキーの小さな袋を手渡した。
「次子さんメリークリスマス」
「貴雄さんもメリークリスマス」
次子さんはにっこり微笑んで帰って行った。
「よしっ、最後の仕上げ、頑張りますか」
俺は改めて腕まくりした。
夕方、玄関のチャイムが鳴り、俺は走って向かった。
急いで鍵を開ける。
「いらっしゃい」
俺の勢いに小糸はくすりと笑って「お邪魔します」と言った。
小糸はジーンズにシャツ、学校指定のPコートを着ていた。
小糸の私服姿に目を奪われた俺が動けずにいると、小糸が困ったように眉を下げた。
「俺は上がっていいんだよな?」
俺は慌てて体を横にずらす。
「うん、もちろん。どうぞ」
小糸が靴を脱ぎ、家の中を見回した。
「あっ、そこの扉がリビング。後ろがトイレだから勝手に使って」
「ああ」
そう言って俺はリビングの扉を開いて、小糸を招き入れた。
リビングに入った小糸は、テレビ脇のチェスト上にある写真立てを手に取った。
「家の写真ばかり飾ってるのって珍しいな」
「それ、全部父さんが建てた家なんだ」
「家族写真とかはないの?」
「母さんが死んだとき、父さんが思い出すのが嫌だって言って全部どこかに仕舞っちゃった。俺と父さんの二人じゃ、写真なんて撮らないし」
「そうか」
写真立てを小糸が元に戻した。
「それよりお腹空いてない?夕飯用意してあるよ」
リビングの机に載った食事、エビのサラダ、フライドチキン、ガーリックトースト、ジャガイモのグラタン、ローストビーフを見て、小糸が小さく口を開ける。
「すごいな」
「ほとんど次子さんが作ってくれたんだけどね。チキンは買ってきた物だし。あっ、でもサラダとかは俺も少しだけ手伝ったんだ」
俺はそう話しながら、椅子に座る小糸に食事を取り分けた。
シャンパングラスにノンアルコールの炭酸を注ぎ、乾杯する。
「お誕生日おめでとう」
俺の言葉に小糸がはにかむ。
「ありがとう」
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