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「食べよっか」
正臣がプラスチックのナイフを使い、不器用な手つきで切り分ける。
俺は一口それを齧り「美味しい」と微笑んだ。
正臣が小さな紙袋をポケットから出し、俺の手に押し付ける。
「言っておくけど、貴雄のプレゼントと比べると本当に大したもんじゃねえから」
紙袋をあけると、中から緑色のレザーの輪がついたストラップが出てきた。
「そこの輪っかの部分を手首に通しながら使うとスマホ落としにくいんだって。あとレザーのところにお前のイニシャル彫ってもらった」
「k・S」のへこんだ文字を俺は愛し気になぞった。
「俺も同じやつの、青買ったんだ」
正臣が自分のスマホにぶら下がったストラップを見せる。
「平気?俺なんかとお揃いの物身に着けて」
「クラスの岡持とか木村だって似たようなの着けてるし、大丈夫だろ。貴雄がお揃いの物欲しがってたから、こういうのがいいかと思ったんだけど、気に入らなかったか?」
俺は無言で首を振った。
涙声で返す。
「俺の欲しい物、覚えててくれて、ちゃんと考えてくれて嬉しい」
誕生日にあげたネクタイピンはあまりに高価で学校には着けてこられないと正臣は言い、俺は一人でベビーリングに鎖を通し、ネックレスとして使っていた。
身に着けてはいなくとも、正臣があのネクタイピンを持っていると思うだけで俺は十分だった。
でもこうやって、普段使いできるお揃いの物を正臣が贈ってくれたのは格別に嬉しかった。
すぐに自分のスマホを取り出すと、ストラップを着け、正臣の目の前にかざした。
「じゃーん。すっごく素敵だと思わない?」
「ああ。いいな」
正臣が笑顔で頷く。
「一生大切にする」
「じゃあ、俺もこれ、壊さないよう一生大切に使わなきゃな」
そう言い、正臣が自分のストラップに触れる。
その瞬間、俺の胸に言い表すことのできない想いが込み上げてきて、思わず正臣にぎゅっと抱きついてしまった。
正臣は当たり前のように抱きしめ返すと、俺の髪の中に顔を埋めた。
「貴雄、抱いていいか?」
そう囁かれ、俺は何度も頷いた。
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