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近づきたい 4
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食べ終わってお店を出る時に、レジの横に並んでいた持ち帰り用の餃子が目に入り、5つ入りを1つ買った。
カサカサなる餃子が入ったビニールを片手に智樹くんと並んで街灯の少ない道を歩く。
「まだ食べるの?」
「だって美味しかったんだもん!藤堂さんにも食べさせてあげようと思って!」
「·········藤堂さんなんだ。お兄さんじゃなくて?」
「え?あっ、もちろん兄さんの分もあるよ!みんなの分も買ってるから藤堂さんだけにあげるわけじゃないからね」
たまたま藤堂さんの名前を出してしまっただけだけれど、なんだか変に意識して内心焦った。
焦ることなんて何もないのに、言い訳を探してしまう。
興味無さそうに「ふーん」と言う智樹くんに、1人でワタワタしてるのが恥ずかしくなって視線を逸らした。
逸らした先に見つけた。
長く揺れる金髪が狭い路地に吸い込まれていくのを。
「藤堂さん········?」
人違いかもしれない。金髪で藤堂さんに似たシルエットの別人かも。
でも、もしかしたら藤堂さんかもしれない。
何でこんな所に。家からはかなり離れているのに。
今追わないとダメな気がした。これを逃したらきっともう二度と藤堂さんに近づけるチャンスは来ない。
「え?先生どこ行くの」
「ごめんね智樹くん!1人で帰れる?」
「そりゃぁまあ、家もうすぐそこだし。どうしたの先生」
「え?······えっと、あっ猫!猫がいたから!」
「追いかけるって?」
適当についた嘘に怪訝な顔をした智樹くんにこくこく頭を上下させる。
明らかに嘘だと気づいている智樹くんの冷ややかな視線が痛い。
「ふーん、追いかけすぎて迷わないようにね先生」
興味が無くなったのか、追求するのが面倒臭くなったのか智樹くんは相変わらず無表情で「またね」と歩き出した。
うーん、最近の中学生は何を考えているのか分かりずらいな。
智樹くんに「またね」と返して、藤堂さんらしき金髪の男の人が入っていった路地に向かった。
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