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悩める子羊30
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タイムリミット。 月曜日の放課後。
「これで総てです。 修正個所があれば言って下さい…」
俺は、森さんと城戸さんに伴われて生徒会室へと向かった。
数日前、ここを飛び出してしまってから役員が揃う席に顔を出すのは初めてだ。
気分は、連行されて出頭する逃亡者。
けど、だからと言っていつまでも逃げているワケにはいかない。
今の俺には、”書記局長”としての責任がある。
生徒会室には、会長の高良以外の主要役員が揃っている。
この席に会長不在というのが納得いかないけど、それを気にする余裕もないのか諦きらめなのか…誰もそのことに触れようとはしない。
書記チームでなんとか仕上げた総会資料の原稿を各担当役員に配り、修正の指示を仰ぐ最終調整。
OKが出たら、印刷・製本の作業に入り、俺たちの役目は終える。
「さぁ、僕達は少しゆっくりさせてもらおうよ」
のんびりとした口調で森さんが言う。
「そうだなぁ~。よく働いたもんなぁ」
城戸さんがソファにドッカリと座り込んだ。
「じゃぁ俺、コーヒー淹れます!」
室内の人数を数え、紙コップを用意する。
インスタントのコーヒーを入れ、電気ポットからお湯を注ぐとコーヒーの香りが室内に漂う。
なんだかとても心が和らぐ。
ここ数日、こんなにゆったりとした気持ちになったコトがあっただろうか…。
いつも時間に追われ、ゆとりなどなかった。
コーヒーをお盆に乗せ、それぞれの元へと運ぶ。
邪魔にならないように、そっと机の隅にカップを置いていく。
周防さんはカップを置く時、珍しく書類から視線を上げ真っ直ぐに俺を見た。
眼鏡の奥の目は、とても優しい。
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