アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
それぞれのマイウェイ 4
-
佐久也は慌てて両手で受け取る。
「ナイスキャッチ!」
「落としたら壊れるだろう!って…。 要らないよ。 これって、もう壊れてるんだろう?」
「え? 壊れてないぞ」
「えっ!? だって…。随分前に、『目覚まし壊れてる』って、言ってなかった?」
…言っただろうか?
……いや、言ったかもしれない…。
毎朝佐久也に起してもらうから、もう長い間”目覚まし”としての機能は果たしていなかった時計。
いつも、佐久也に起こしてもらいたいから……ただの電池切れだったのに『壊れた』と、言ったかもしれない。
でも、それは随分前のおぼろげな記憶。
「壊れてないんだったら、仕方がないから記念に貰っといてやるよ!」
佐久也は手元の時計に目を落とし、小さく笑った。
「何の記念だよ?」
「そんなの『高良君、留年しないでよく卒業できました!』記念!」
言って、小憎たらしい表情でベロを出す。
まるっきり小学生のようなの仕草。
くっそ…可愛いんだけど……。
「佐久ちゃん、ありがとうな。 そういうところも大好きだぜ!」
俺の言葉に、佐久也は一瞬真面目な顔になったけど、すぐに不機嫌そうな表情を作る。
「高良…まじっ、キモッ……」
「そういう生意気な所までも、好きだぞ!」
口を引き結び口角を上げ、爽やかな笑顔を向けてやる。
「…うっ、うるさいよ! ニヤケてんなっ!」
いやいや、『ニヤケて』って…。精一杯の爽やかな笑顔なんだけどな。
「じゃぁ俺本当に先行くけど、絶対遅れるなよなっ!!」
少し振り向いてクスリと笑い、廊下へ出て行く佐久也を見送る。
階段を駆け降りて行く足音を聞きながら、思わず呟く。
「佐久也…本当にマジで好きだ………」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 66