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数日後、あいつが熱を出した。
元々体も弱そうだし、大した飯も食っていなかったから免疫力もついてないんだろう。
適当に消化のいいものを食わせて解熱剤を飲ませると、仕事へ行った。
今日に限って治さないといけない患者が多くて腹が立つ。
結局いつもより数時間遅く帰宅し、あいつが寝ているはずの寝室を覗くと、布団はベットから半分落ちかけていて肝心のあいつの姿はなかった。
無人のベットにどこかデジャヴを感じて頭をかいた。
あの熱で遠くまでウロウロ出来るとは思えないし、まずあいつが自らの意思で脱走するとは考えにくい。
とりあえず荷物を置いて家の中を捜すと、浴室の扉が半開きになっていて、電気をつけた。
そいつは何故かお湯も張ってない浴槽で体を丸めて眠っていた。
俺のブカブカな服を着たまま、熱で速い呼吸を繰り返す。
髪をよけて顔色を見ると、解熱剤が切れたのか赤く火照った顔をしていて、額も熱くかなり熱が上がっていた。
「おい、こんな所で寝たら治るもんも治らねぇだろ、起きろ」
額に滲む汗を拭ってやると、そいつはゆっくり目を開けて焦点の合わない目で俺を見て「ひ…ッ」と喉を鳴らした。
殴られると思ったのかギュッと頭をガードしてさらに丸くなる。
いつもとは比べ物にならないほどオーバーな反応に驚いた。
熱のせいで理性が弱まっているみたいで表情もわかり易すぎるくらい怯えている。
は、は、と呼吸を荒くして左耳を庇いながらズリズリと距離を取ろうとする。
限界まで下がって左耳を必死に擦る。まるで何かを拭い取ろうとしているみたいに。
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