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名前 26
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しばらく黙って、小鳥みたいな量の飯を下手くそに口に運んでいたそいつは、何度も「シロ」と呟く。
………もしかして、喜んでんのかこいつ。
「気に入ったかよ」
「…………ん。……おれ、シロ。なまえ」
笑いこそしないが、目が柔らかい。
名前が貰えたことも嬉しいんだろうが、それより自分の望みが叶ったこと自体に喜んでいるようにも見える。
こんなに喜ぶのなら、もっと時間をかけて考えた方が良かったかと少し罪悪感を感じた。
「じゃあシロで決定だな」
「ん」
ゆっくりとコクコク頷く"シロ"は、やっぱり表情は無いが嬉しそうに見えた。
それが自分でもよく分かっていないのか、確かめるようにまた頷く。
「それ、嬉しいってやつなんじゃねぇの」
「うれし………?」
遅い瞬きを繰り返し首を傾げる。
「名前、は……うれしい…………?」
「知らねぇよそんなの。自分にきけ」
「ん」
突き放した物言いをしても気にした様子もなく、また料理をちまちま口に運ぶ。
以前、俺が用意した飯を自分の許容量を超えて食い続け、食べたものを全部吐き出しやがったことがあってからは、シロの飯は俺の半分くらいにしていた。
それでもまだ多いみたいだが、今日はよく食っている。
胃がだんだん食べ物を受け入れるのに慣れてきたのか、それとも気分が上がって食欲も増えたのか。
おそらくどっちもだろうけど。
子供みたいに単純な頭をしているシロを、少しでも可愛いだなんて思ったことは内緒にしておこう。
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