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記憶 1
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「いやぁ本当に助かったよ碇くん。うちの専属になってくれないのが心の底から惜しいけれど、2ヶ月近くも働いてもらったからね。贅沢は言わないでおこう。また君に依頼することがあった時はよろしく頼むよ」
「金次第だな」
「君は本当に釣れないな。朔間、碇くんの見送りをしてくれ」
朔間と呼ばれた眼鏡の男は静かに頷き、どうぞこちらへと扉を開けた。
2ヶ月通っていたのだからもうエレベーターまでの道なんて覚えているのに、こいつはいつも出迎えと見送りをする。
まあ、口数の少ない男だから特別気になることはないが。
「……………アレは、もう死にましたか」
エレベーターで地上まで上がり、扉を開けて俺を外に出すと、いつもの「お気をつけて」の代わりに口にした言葉。
アレってシロのことか?
ここの従業員は無駄話を一切しないことをこの2ヶ月で嫌という程知った。それなのになぜそんな事を聞くのか。
意図を読み取ろうとしたが、機械的な表情に隠れてわからなかった。
「シ…………いや、まだ生きてるな」
シロと言いかけてやめた。
「そうですか。………要らない事をお聞きしてすみませんでした、忘れてください。それでは、お気を付けて」
一瞬だけ、何か言いたげに口を開いたが、すぐにいつもの調子に戻って淡々と言葉を並べる。
こいつはシロの事に関して詳しいだろうかと思い聞こうとしたが、朝日が上り始めたのを見てさっさと帰ることを選んだ。
何度も悪夢を見ては、震えながら起きるあいつの顔がチラついて、無意識に歩幅が広くなる自分に舌を打った。
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