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記憶 4
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急に吸い込んだ空気は、喉で詰まって痛かった。
痛みを我慢して懸命に酸素を取り入れる。
その間、背中を上下する何かを全身が拒絶して、胃液が喉の奥までせり上がってきた。
「吐け。我慢するな」
いつの間にか顔の前に用意されていたビニール袋に、言われた通り嘔吐物を吐き出す。
1度吐くと次から次へと止まらなくなって、出るものが何も無くなっても胃液を戻し続けた。
背中を上下するそれは、オレがえずいている間もずっと繰り返されていた。
最初は怖かったけど、全て吐いて体が少し楽になると、その温もりでだんだん呼吸が落ち着いてきた。
「…………少しは落ち着いたかよ」
聞き覚えのある声が聞こえ、そちらに視線を移すとイカリさんの顔があった。
朝日で逆光になって表情はよく分からないけれど、仕事帰りなのかスーツを着ている。
「…っとにお前なぁ、苦しい時くらい声出すなり助け求めるなりしろよ。気づかねぇだろ」
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