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記憶 8※
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自分の血を見たのが、随分昔のことのように感じる。
もうしばらく血を流していない。
…………そんなの、へんだ。おかしい。
目の前の青いカミソリしか目に映らなくなって、他の色や音が遠ざかっていく。
吸い寄せられるようにそれを手に取り、刃に反射する自分のぼやけた姿を眺めた。
赤が、ない。
ビリッと手のひらに引き攣る痛みを感じた。
左の手のひらにカミソリの刃がくい込んでいる。
じわじわと赤が現れて、細い腕に線を作って落ちていく。
あ、流れてく………なくなってしまう……。
ジクジク波打つように痛む手のひらからカミソリを離すと、腕の真ん中に刃を立てた。
そのまま力を込めてスパッと引く。
「……ッ」
痛い、痛い、痛い、痛い……………っ。
さっきとは比べ物にならないほど大量の赤がどくどく溢れる。
痛い痛い痛い、これ、痛いの、いたい、痛い。
血が流れて、床が赤く染まって、
呼吸がどんどん速くなって、
全身が震えて、また腕に刃が刺さる。
何度も何度も刺した。
次第にカミソリを振り下ろす力も強くなっていく。
「………ッ、ぅ……っ…………!」
いたい、痛いけど、怖くない。
痛みがある間は、恐怖が薄れていくような気がした。
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