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別れ 15
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非通知から電話がきたのは、彼を連れ去る数十分前だった。
『もしもーし、えっと、朔間はじめさん?の携帯で合ってる?』
「どちら様でしょうか」
その人は、随分と気の抜ける声音をしていた。
『碇流って闇医者知ってるでしょ。その人と一緒にいる顔に傷のある男の子も。
りゅうさんにあの子もう要らないから捨ててこいって言われたんだけど、捨てちゃうの可哀想だからはじめさん引き取ってくれない?』
何故私と碇さんに面識があることを知っているのか。それどころか”彼”のことまで。
碇さんは、仕事相手の情報を軽く漏らす人には見えなかった。
でまかせにしては、どこか確信めいた自信を感じる。
こう言えばお前はきっと引き受けるだろ、と。
「お断りします。彼はもう私の監視下にありません」
『………あの子、たぶん今日死んじゃうよ。りゅうさん要らないものはすぐに処分しちゃうから。はじめさんが来てくれたらあの子も』
「貴方の言っていることが事実だという根拠は何ですか」
本当なら、彼はもう処分されていたはずの存在だ。
今さら処分されたところで、私には何も関係ない。
『僕が今はじめさんに電話してるこの状況ってかなり根拠にならない?意味もなく他人の携帯番号調べてまで嘘つかないよ』
そんなもの根拠にならない上に、電話の相手の目的が何か分からない。
これ以上話を聞く必要なしと判断し、電話を切ろうとした。
ほんの一瞬だけ、幾度となく見た彼の何も映さない目を思い出す。
「……………彼は今どこに」
『りゅうさんの家。住所とオートロックのナンバー教えてあげる。今ならりゅうさん留守だよ、きっと1時間は帰ってこない』
その電話の内容を全て信じたわけじゃない。
半信半疑。電話を切って少し考える。
電話の相手が嘘をついていた場合、私が行っても行かなくても何も問題は無い。
仮にもし、本当のことを言っていたとしたら、私が行かなければ彼は。
「………おかしな話ですね。貴方の幸せを望んでおきながら、”生きてほしい”などと思ってしまうのは」
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