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恋 2
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「薬を取りに行くだけです」
私の言葉が理解出来ていないのか、「碇さん」と「痛い」を繰り返す。
キリがなくて袖を掴む手を剥がして立ち上がる。
彼はもう私を引き止めることはなく、剥がされた手のひらを静かに見ていた。
薬を取って戻り、水で無理やり流し込む。
飲む瞬間は少し怯えるものの、大した抵抗もせず受け入れる。
「食欲があるのなら簡単に作りますが、どうしますか」
「………………」
感情を取り戻しても、意思がないのは変わらずみたいだ。
「そうですか。では何かあったら声をかけて下さい」
部屋を出る時に彼を見ると、もう眠っていた。
実年齢よりずっと幼く見える顔で苦しそうに眠っている姿を見ると、昔に戻ったような錯覚に陥る。
熱で意識が朦朧としているとはいえ、また私の前で眠ってくれるのですか。
空っぽだった貴方を変えた数ヶ月、
碇さんと過ごした時間は、商品として生きてきた13年間よりも、大きなものだったということ。
それなら、碇さんにとっては?
碇さんにとって、この子と過ごした時間は簡単に捨ててしまえるものだったのか。
細い足首を飾るアンクレットに気づいてから、わずかに感じていた違和感が確かな疑問に変わっていた。
アクセサリーに疎い私でも知っている有名ブランドの高価なものだ。
そんなものをただの実験体につけるとは考えにくい。
貴方はそのアンクレットの価値をわかっていないのでしょうが、
私には、自分のものだと主張する首輪のように見えますよ。
絶えることがなかった生傷が消え、
清潔な衣類を身につけ、
普通の人間のような顔をするようになった。
これで大切にされていなかったと考える方が不自然だ。
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