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恋 3
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あれから丸一日熱は下がらず、彼が目を覚ましたのは私の家に来て2日目の夜だった。
「微熱ですね。気分はどうですか」
「…………」
やはり何も答えない。
私と目が合っただけでビクビクする姿は、以前では想像もつかなかった。
今までも怖がっていたのだろうか、私のことを。
「そんなに怯えていては疲れるでしょう。碇さんにもそうやってビクビクしていたのですか」
碇さんの名前に反応したのか、瞳が揺れて泣きそうな顔をする。
泣きたいのなら泣けばいいのに、涙は流れない。
もしかしたら泣き方を忘れてしまったのかもしれない。
「……………ない」
「聞こえません。もう少し大きな声で言ってください」
「こわい、なぃ………イカリさん……怖いない…」
震えながら、そんなことを言う。
この世の全てに恐怖しているような態度を取りながら、碇さんは怖くないと。
碇さんの傍でなら、貴方は楽に息ができるのですか。
「……そうですか。それなら”怖いない”ではなく、”怖くない”と言うのですよ」
「こわ、く、ない………?」
「そうです」
怖くない、と新しい言葉を覚えようとしているのか、口に出して繰り返す。
こういうことろは子供と同じだ。
子供だったあの時から時間が止まってしまっている貴方が、やっと安心出来る居場所を見つけられたのなら。
「イカリさんはどのような方でしたか?」
「………?」
「教えて頂けませんか、碇さんと過ごした貴方の時間を」
戸惑いと不安を滲ませる顔でしばらく黙り、
恐る恐る、ぽつりぽつりと、拙い言葉を並べる。
知らない言葉や間違えている言葉を私が教えながら、
名前を貰ったこと、誕生日を祝ってもらったこと、一緒にご飯を作ったことを何とか伝えようとしていた。
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