アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
恋 4
-
貴方と初めて会った時も、こんな風に沢山話をした。
商品になったばかりの貴方は、私が檻の前を通る度に、今日は何をした、ご飯は何だった、と聞いてもいないことを何度も報告してきた。
懐かしさを覚えながら、彼の話に耳を傾けた。
商品ではなく、ひとりの人間として過ごした碇さんとの時間。
最初は私の顔を伺いながら話をしていた彼も、徐々に表情に固さがなくなっていく。
「えっと、それと………」
「貴方は碇さんが好きなのですね」
「……え?」
ぽかん、とアホな顔で固まる。
溢れでんばかりの想いを全身で表現しておいて、おかしな反応をするものだ。
「違いましたか?」
「すきは、何……?」
「さあ?貴方が言うところの”触られるとドキドキする”ってやつではないですか?」
聞いているこちらが耳を塞ぎたくなるようなことを言っていた自覚はないらしい。
少し前まで喜怒哀楽さえなかった子が、恋心なんて複雑な感情を持てるのか疑問に思うけれど。
いや、何もなかったからこそ、突如現れた唯一の心の拠り所に惹かれてしまうのは至って当然の事なのかもしれない。
「俺が、イカリさん……すき?ドキドキは好き、てこと」
まだ腑に落ちないという顔。
恋心を自覚させたところで私に得はないし、自覚させてしまえば余計に彼の中で碇さんの存在が大きくなる事は目に見えている。
そうしたら、今以上に苦しむ結果になるだろう。
このまま、何も知らない子供のままでいれば、傷つくこともないだろうか。
「…………シロさん、と言いましたね」
「ん」
「碇さんに会いたいですか」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
161 / 256