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恋 7
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〔シロside〕
サクマさんを見送ってからどれくらい経っただろう。
空が曇ってきて雨が降りそうだ。
俺は、車を降りた場所からずっと動けずにいる。
どうしてサクマさんは俺をここに連れてきたのだろう。
俺はイカリさんに捨てられたのに、ここに来て本当に良かったのかな。
もしかしたら、戻ってきたことを怒られるかもしれない。もう俺の事なんか忘れているかもしれない。
それでも、会いたいと思ってしまった。
もう一度顔が見たい。遠くからでいい。会話なんてなくていい。俺に気づかなくたっていい。
だから、もう一度だけ。
ぽつぽつと雨粒が降り始め、次第に強くなっていく。
シャワーのような雨に打たれること数十分。
マンションの自動ドアが開き、出てきた人物に心臓が痛いくらいうるさくなった。
「ぁ……」
会えるだけでいいと思ってた。顔を見るだけでいいって。
それなのに、足が勝手に前に進んでいく。
黒い傘を開き、俺に背を向けて歩き出した。
いやだ、いやだ、待って、行かないで。
声は出していないのにイカリさんが急に足を止めた。
それだけで嬉しさが込み上げてきて思わず駆け出そうとした瞬間、小柄な人影がするりとイカリさんの傘の下に潜り込む。
何か話しているのかしばらく動かず、唐突にマシロさんらしき人が背伸びをした。
「………………」
傘が2人を隠して、何をしているのか見えなかったけど、気づけば俺は、逃げるように裸足のまま走り出していた。
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