アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
帰る場所 4
-
「ねぇ、ほんとに良かったの?僕が治るまでひなたくん迎えに行かなくて。ひなたくんが知ったら怒っちゃうんじゃない?」
「かもな。だから今から迎えに行くんだろ」
「本命差し置いて他の男とふた晩も一緒にいちゃうお兄さんなんか、ひなたくんに愛想尽かされちゃえ」
本当にそうなったら僕が拾ってあげるね、とヘラヘラ笑う顔は、以前よりどこか幼さが見えるようになった。
いつの間にか降り出していた雨。シロが震えている気がして、足早に歩く。
エントランスを抜け駐車場に向かう時、ふと、シロの声がした気がして足を止めた。
「し………」
「ちょっと待ってよお兄さん、僕も入れて〜」
許可も得ず俺の傘に潜り込んだ真代は、ちょっと濡れちゃったじゃんと文句を言いつつ肩の水滴をはらった。
「あ、お兄さんまつ毛がほっぺにくっついてるよ。僕が取ったげる!目瞑って」
背伸びをして顔を近づけてくる真代を手で押し返す。
「いい。キスするつもりだろお前。自分でとる」
「ちぇ〜」
全然残念がった顔ではない真代を置いて歩き出した。
こんな奴を相手にしている暇はないんだ。
「あっ、待ってよ〜」
──────
「どうも、また会ったな。あんたに預けてたもんを迎えに来た。あいつは?」
想像していたよりも庶民的なアパートに住んでいるらしい朔間創は、突然の訪問に驚いた様子も見せず、そうですか、と言った。
「シロさんのことを仰っているのでしたら、1時間ほど前に碇さんのご自宅の前まで送り届けたはずですが」
その言葉にザワっと嫌な予感が駆け抜けた。
俺の後ろにいた真代も「あ〜らら…」とマズそうな顔をする。
どうもシロを連れて帰るには、まだしばらくかかりそうで頭を抱えるしかなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
174 / 256