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帰る場所 10
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「あの、名前、なんて言うんですか?さっき聞くの忘れてしまって……」
「…………」
名前………イカリさんがくれた。
イカリさんのものではなくなった俺でも、まだ名乗って良いだろうか。
使い方の分からない箸をじっと見ながら考える。
「い、嫌だったら別に無理に言わなくても……っ」
「………………………シロ」
嫌かどうかは分からない。でも、俺にはまだこの名前を捨てる勇気がない。
小さく零したその言葉にハラセさんは「名前があるなんて知らなかったな」とくつくつ笑う。
「シロさんか!あ、じゃあ歳はいくつですか?オレ今年で16になったんです。もしかして同い年だったりするかな?オレ周りにあまり歳の近い人いなかったから、シロさんと仲良くなれたらなって」
「…………19」
「ええっ!?す、すみませんオレ同い年なんて言っちゃって!そんなつもりじゃなくて……!」
何故か慌てて謝罪するアズマさんは色んな表情をする人だ。
2人が食べ終わっても一口も料理に口を付けなかった俺を見てアズマさんは「口に合いませんでした……!?」と大袈裟なくらい落ち込んでしまった。
アズマさんが何に悲しんでいるのか理解できなくて黙っていると、さらに落ち込んでしまった。
肩を落として食器を下げるアズマさんの後ろ姿は、垂れた耳としっぽが見えそうだった。
「もう夜も遅い。そろそろ部屋に戻ったらどうだい?」
「はい……おやすみなさいハラセさん」
「ああ、おやすみ」
まだしょんぼりしたまま「こっちです」と俺の手を引くアズマさんに連れられてあの不気味な部屋に戻る。
部屋に戻るなりアズマさんはすぐに床に寝転んで、近くにあった薄手のタオルを肩にかけて寝てしまった。
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