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帰る場所 13
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「俺今夜ここから出るんだ。お前も来るか?」
ミヤビさんの言葉の意味がわからなくて首を傾げた。
あんなにハラセさんを慕っているように見えたのに。
「あいつは毎月決まった日に夜出かけるんだ。何かのオークションに参加してるって言ってた。今夜はその日だ、今なら抜け出せる」
この日のために準備をしてきたとミヤビさんは言った。
「この家、どこを探しても出口が見つからないんだよ。だから1年かけて抜け道を探したんだ。お前だけ残ってもいいけど、俺は助けに戻ったりしないからな」
で、どうする、と言いかけたミヤビさんを遮るように、ピーと機械音が鳴る。
「は!?嘘だろ、もう帰ってきやがった、今日に限って早すぎだろ!」
誰かが家に入った時に鳴るように設定されているらしいその音に、ミヤビさんは慌てて部屋から飛び出て振り返る。
「おいお前!何してんだ逃げるぞ!」
「·················どこ、に?」
逃げる先などどこにもないというのに、逃げるとはどういう事だろう。
俺は、ここから逃げたあとどこに行けばいいんだろう。
イカリさんに捨てられた俺の帰る場所は、どこにあるの。
今逃げてもまた飼われて同じことが繰り返されるだけ。それなのに、この脱走に意味なんてあるのかな。
「どこでもいいだろ!そんなのは後で考えろ!俺は逃げるぞ、お前はどうすんだ!」
“お前はどうしたいんだ”
ミヤビさんの言葉にイカリさんの記憶が被る。
どうしたいのか、わかんないよ。
教えて。誰か、俺の気持ちを決めて。
俺はどうしたらいいの。命令してよ。
俺が今何をしたらいいのか決めて·········イカリさん。
そうしたら、俺は、動けるのに。
何も言わず視線を下げた俺に、ミヤビさんは苛立ったように舌を打って俺の手を強く引いた。
「ああもう、行くぞ!」
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