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帰る場所 24
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雑に巻かれた布のお礼をする。十数年ぶりのやり取りは少しぎこちなかったと思う。
時間が止まったみたいに固まるまーくんに焦りながら首を傾げる。
ど、どうかした?聞こえなかった?
どうしたらいいか分からず一緒に黙っていると、まーくんは目を逸らして口を開いた。
「……………僕のこと、覚えてないんじゃなかったの」
「ん」
少しムッとしているようにも見えるし、照れているようにも見えて、それがどんな感情なのかよく分からない。
「あの日……僕がいなくなったあと、少しは捜してくれた?」
まーくんがいなくなった日。俺の世界が終わった日。
まーくん、再会した時俺のこと覚えてないって言ってたのに、本当は覚えてたんだ。
「まーくん、かくれんぼ上手だったから、えと、ずっと隠れてるって、思って……ずっとさがしてた」
毎日公園に行って探して、暗くなってもまーくんが出てくるのを待ってて。家に帰ってから「まーくんは?」ってお母さんに何度も聞いて。
まーくんは居なくなったんだって理解したのは、きっと1週間くらい経ってから。
それを上手く説明出来ていたかはわからないけど、まーくんは最後まで聞かず、もういいと口にして俺の肩に頭を乗せた。
「仕方ないから、僕を忘れてたこと、少しだけ許してあげる」
「………ん」
少しだけだから、と念押しするまーくんにもう一度頷いて、目の前の肩に俺も軽く頭を預けた。
「あと、ごめん。お兄さんがひなたくん捨てたがってるなんて嘘だよ。僕が騙したの。お兄さん迎えに来てるから、一緒に帰ろうよ、ひーくん」
「ん」
顔は見えないまま自然と絡まるお互いの人差し指。
手を繋いでると言うには少し足りなくて、でもちゃんと触れている。
無くした時間を取り戻すことは出来ないけど、やっぱりこうして近くにいて触れていると気持ちが落ち着いていくような気がした。
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