アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
居場所 3
-
板挟みになり、取られて奪い返されてとふたりの間を行ったり来たりしていると、背後から「おい」と低い声が聞こえた。
その声に心臓がきゅっとなって振り返ると、冷たい印象を放つ綺麗な黒い瞳と目が合った。
ふる、と唇が震える。全身の血が騒いで、何もかも溢れてしまいそうだった。
イカリさんだ………イカリさんが、俺を見てる。
「シロ」
走り出した。
考えるより先に身体が動いていて、身体より先に感情が前へ出る。
色んなものが混ざり合ってぐちゃぐちゃなこの感情の名前を、俺は知らない。
そのまま体当たりをするようにイカリさんに飛び込んで、背中に回した手にぎゅうっと力をこめた。
イカリさんも優しく俺を包み込んで、遅くなって悪かったと囁く。
自分の意思で動いて勝手に抱きついても、イカリさんは怒ることなく受け入れてくれる。
自分がしたいと思ったことをして、それが許容されるのは、なんだか体がフワフワして気持ちいい。
……イカリさんの匂いだ。
安心するその匂いにずっとこのままでいたくなる。
抱きついたまま離れない俺を、イカリさんは軽々と抱き上げて顔の距離が近くなった。少し恥ずかしくてイカリさんの首に顔を埋める。
「イカリさん」
「なんだ」
「好き、おれ、イカリさん好き……みたい」
イカリさんは軽く笑って、知ってる、と俺の頭にキスをした。
知ってる、だって。そっか、イカリさん知ってたんだ。
「…ふふ」
「ちょっと待て」
急にベリっとイカリさんから剥がされて、真剣な表情で俺の顔を見る。
「……??」
「お前今笑ったか?」
「?」
「絶対笑っただろ!あぁくそ、もったいねえことした。おい、今度から笑う時は必ず俺の顔見て笑えよ、わかったな?」
「ん」
イカリさんが何をしたかったのか分からないけれど、とりあえず頭を縦に動かした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
197 / 256