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「倫、待って!」
止める声を無視して勢いよく部屋を飛び出す。
携帯と財布だけポケットに突っ込んで玄関へと足を急いだ。
玄関の扉に手をかけた時、腕を掴まれてふいに泣きそうになった。
「なあ、待ってって、ちゃんと話そう?りん、ッ」
「雅也は酷いよな、」
振り向いた俺の顔を見て驚いた顔をする男、雅也は俺の恋人だ。
って、恋人っていう関係を名乗っていいのか分からないくらい、俺らはもう冷え切っていたけれど。
「お前、最後に俺に触れたの、いつだったか覚えてる?」
俺の質問に顔を歪めながら口を噤む雅也。
覚えてるわけないよな、そりゃそうだ。何ヶ月前のことだと思ってんだ。
でも、俺はちゃんと覚えてる。
お前に触れて貰えるのが嬉しくて、それ以降触れて貰えないのが悲しくて、全部、覚えてる。
でもそんなこと、雅也にとっては記憶しておくほどのことでもないんだなって、改めて思い知らされて、この場には不釣り合いな笑みがもれた。
「バイバイ。」
腕を振りほどいて足を進める。
焦ったような声が聞こえたけど、何て言ったかは分からない。
追いかけてきやしないのに無駄に走って、雅也のアパートをあとにした。
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