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「…リオ…っ」
「…ふ…ぁ…」
ぺろり、とリオの舌が頬を這った。
クリスは真っ赤になり、リオを押し返す。
「!?──ッリオ!」
「っひゃ!」
大した力ではなかったが、バランスを崩し、リオがベッドに倒れた。
金色の目が、はっと漆黒に戻っていく。
そこに映ったクリスは、手を引っ込め、今まさにベッドから立ち去るところだった。
「あ…ぁ…っ!ごめんなさい!!」
リオは飛び起き、とっさにクリスの手を掴んだ。
しかしクリスは手を払い、背を向けたまま部屋を横切っていく。
「ご、ごめんなさ…っおれ…!ウェストさん…!ごめんなさい…!」
ベッドから飛び降り、リオが追う。
クリスは扉に手をかけ、少しだけ振り向いた。
「リオ…休んだほうがいい。今日はすまない…一人にしてくれ」
「ごっ…ごめんなさい…ごめんなさい…!」
「大丈夫だから…リオ、今日はおやすみ」
「ごめんなさいっ!」
「おやすみ」
一度も振り返ることなく、リオの目前で扉が閉まった。
「…ご…めんなさ…」
言いきれなかった言葉が、ぽつりとこぼれる。
同時に、熱い両眼から涙が溢れ出し、リオの呼吸を奪っていった。
ウェストさん…。
「あ…ぁ…っ…うぁぁ…ッ!」
扉に寄りかかったまま、リオはか細い声をあげた。
ぎゅっと瞑った瞼の裏に映るのは、自分を見つめたクリスの目。
優しい青い目。気遣ってくれた目。それが、魔物を見るような怯えた目つきに変わる。
絶対にだめだって…思ったのに…!
「ふぁ…!うぁぁん…!」
リオはその場に座り込み、涙が枯れるまで泣き続けた。
今までクリスがしてくれたこと、今まで二人でやってきたこと、短いながらも様々な思い出が甦ってきて、リオの渇いた喉をいっそう締め付ける。
優しい人を、裏切ってしまった。
涙を拭うと、後悔と共に、また違った恐怖がリオを襲ってきた。
このままこの村に居続けたら、またいつこんなことが起こるかわからない。
ダンのことも、ディックのことも、そう。
特にダンには、もう十分に血を提供してもらっているのに、もし衝動を抑えきれなくなったら、いつかダンの血を飲みほしてしまうかもしれない。
そんな恐ろしいことになる前に…
もう…この村から…出て行ったほうがいい…。
リオは両手に埋めていた顔を上げ、最後に小さくしゃくりあげた。
いつの間にかランプの燃料も底をつき、明かりが小さくなっている。
リオはゆっくりと深呼吸をし、ドアに寄りかかりながら立ち上がった。
客間を出て、のろのろと自分の部屋へ向かう。
朝日が昇るまでの間、リオはここで過ごした数カ月のことを思い出せるだけ浮かべながら、部屋を掃除した。
ダンやクリスにもらった様々なものを、磨けるものは布で磨き、そっと机の上に置いていく。
ただ、服だけはどうしても必要だったので、自分が記憶を失う前に着ていたもの、
そしてクリスが自分に合わせて作ってくれたシャツなどを、謝罪の言葉を呟きながら身につけた。
ベッドに腰かけながら、朝日が昇るのを眺める。
音のよく響く木造の家屋で、誰かが動く気配はない。
やがて立ち上がり、リオはそっと裏口から家を出た。
井戸で水を飲んで行くことも考えたが、これ以上クリスから何かを貰って行くのは気が引けて、さっと庭を眺めながら横切る。
そしてケープのフードを目深にかぶり、泣き声をこらえながら、リオは村を出て行った。
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The next episode → LLOYD
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