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「大丈夫?リオちゃん」
「あっ…だ…大丈夫…です。ごめんなさい…」
助けようとしたロイドの手を避け、リオは今朝方自分が腰かけていたスツールに向かって歩き出した。
念のためロイドから少し距離を取ろうと、さりげなくスツールを動かし、腰かける。
その時、ふと、薬草やロイドの匂いとは違う、人の匂いを感じた。
誰かはわからない…でも、おれの知ってる人…。
「ロイドさん、あの…ここに、誰か…?」
「あぁ、村の人が…ね。酷い胸やけがするっていうから、胃薬を出しておいたよ」
ロイドはリオの質問にさらりと答え、グラスに移したジュースを差し出した。
まるで血のような、瑞々しいベリーのジュース。リオは礼を言って受け取り、そっと口を近づける。
喉は、すごく渇いている。まるで器官同士が貼り付いてしまっているかのように、痛いほどの渇きは消えていない。
それなのに、今度はジュースを口に含むことができなかった。
重い不安が、ずしりとリオの喉を塞ぐ。
おれ…さっき…
ロイドさんにも…噛みつこうとした…。
ここには村の人も来る…
早く…ここを離れなきゃ…。
ぎゅっとグラスを握りしめ、ちらりと出口に視線を向ける。
これを、飲んだら。ごくりと喉を鳴らし、リオはグラスを見つめた。
覚悟を決め、一気に煽ろうとしたその時、ロイドがリオの手を掴み、引き止めてしまった。
思いがけない制止に、リオは驚いてロイドを見上げる。
リオの手のひらに、ころんと小さな瓶が転がされた。
ダンへの、薬…──。
「はい、これ。ちゃんとダンに届けてね」
リオに小瓶を握らせながら、にっこりとロイドは言った。
リオは顔を上げ、小さく首を振る。
「で…で…もっ…おれ…!」
「うん。リオちゃんがどうしてもここを出て行くっていうなら、別に止めないけどね。俺は結局ここを離れられないし、リオちゃんが届けてくれないと、この薬はダンのところへは行かないよ。それにダンの様子が詳しくわからないと、どんなに容体が悪くたって、俺には何にも対処できない。それでもいい?」
きっぱりと突き付けられ、リオはとっさに反論することができなかった。
それでも、離れていくロイドに薬を返そうとしながら、必死に首を振って抗議する。
「そんなっ…お願いします!だってダンは…っ…ロイドさんの弟なのに…!」
「うん、そうだね。でも身内のことで、村人全員の平穏を脅かすわけにはいかないから」
ロイドはさらりとそう答え、作業台の上を片付け始めた。
柔らかな口調の中にあった一つの違和感に、リオはぴくっと動きを止める。
脅かす──?
「え…ど…して…?」
ぽつりと出たリオの疑問に、ロイドはくすっと笑った。
「そう…じゃあ、ダンは言わなかったんだね。俺がここにいる理由」
そう言って微笑んだロイドの顔は、どこか寂しげだった。
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