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E p i s o d e . - L I O - Ⅱ ※R18
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とっぷりと日が暮れた、夜──。
リオは、ロイドの小屋の前に居た。
ケープのフードで頭を覆い、その下から、不安げな目がきょろきょろと辺りを伺っている。
その視線は、小屋の戸口に立つロイドと、自分が握っている小さな巾着へ交互に向けられていた。
布の袋の中身は、ダンへの、薬。
こうしていざ届けに行くという時になり、リオは尻込みしている。
もじもじとその場を動かないでいるリオに、ロイドは小屋の中からにっこりと笑いかけた。
「気をつけて、いってらっしゃい」
「あ…い、いってきます」
明るい呼びかけに、リオは反射的に言葉を返してしまった。
はっと口を押さえるが、もう遅い。
ロイドがくすっと笑うと、慌てるリオの側まで屈み、額に軽くキスをした。
「無事に帰って来られるように、おまじない」
戻ってくることを前提とした言葉に、リオは切なげに眉を寄せた。
額に触れた温かな手の感覚が、リオの渇いた喉を締め付ける。
リオは堪えるためにきゅっと唇を噛み、ぺこりと頭を下げた。
「ロイドさん…あの…いろいろ、ありがとうございました」
なかなか上げられないリオの頭を、大きな手がぽんぽんと撫でる。
「朝までには帰ってくるんだよ、リオちゃん。ダンの様子、聞かせてね」
結局一度もロイドをまともに見れないまま、リオはもう一度頭を下げ、森の中へ走っていった。
*
*
こんなことになるなんて、思ってもいなかったのに…──。
「──…っ…っう…」
薄暗い森の中を、リオは早足で進んでいた。
息が切れるほど急いでいるわけではないのに、喉はぜえぜえと苦しそうな音を立て、暗闇以上にリオの足を重くさせる。
鬱蒼と茂った木の間から漏れる月明かりが、濡れた丸い頬を照らしていた。
このまま居なくなろうと思っていたのに。
絶対に戻ってこないって言い聞かせていたのに。
『帰ってくるんだよ』って言われた瞬間、今にも声をあげて泣きそうになった。
ひとりになるのは寂しい。
ひとりは怖い。
出来ることなら、ずっとずっとあの村で、皆と──…。
「っ……──!」
リオはついに堪え切れず、顔を押さえて立ち止まった。
ぽろぽろと零れる涙が、指の間を伝い、落ち葉の地面に染み込んでいく。
怖い…怖いよ…。
でも…だめ…ここに居ちゃだめ…。
早く遠くに行かなくちゃ…。
気持ちは焦るのに、足は鉛のように重く、乾いてこびりついた喉が苦しい。
様々な理由をつけて、もう一度ロイドの小屋に戻ろうとしているようで、リオはそんな自分にぶんぶんと首を振った。
これ以上甘えるわけにはいかない。
ルーナ村の真実を、ダンの過去を、ロイドの今を、聞いてしまったからこそ──。
自分は、ここに居てはいけない。
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