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「……っ…はぁ…」
深呼吸をし、リオはゆっくりと歩き出しながら、ロイドに聞いた村の歴史を思い返していた。
あの話を聞いた時、驚きと、言いようのない恐怖と共に、自分と同じような仲間が居るのかもしれないと、ほんの少しの喜びを感じた。
だけど、その期待は瞬く間に消え去った。
結局、自分は話の中の“彼ら”と同じ、人を食料として生きている、恐ろしい化け物なのだ。
もし、自分がここを出て、“彼ら”の住処を目指し辿り着いたとしても、受け入れてもらえるかもわからないし、そもそも人間を襲いたくなんかない。
万が一、自分のように血液を糧に生きている者ではなく、人間そのものを食べて生活している者たちなら、なおのこと。
結局、やはり自分には行くあても、これから先生き長らえる術も──何もない。
「──…っ!」
そう思った瞬間、背筋をゾクッと悪寒が走った。
ナイフを手に、自分の喉を切り裂く──。
真っ赤な血が目の前に広がり、何もかも、赤い世界に変わってしまう。
「…あ…っ?」
突然浮かんできた覚えのないイメージに、リオは震えて立ち止まった。
な…なに…今の…なに…──?
おれ…この感覚…知ってる…?
荒く息を吐きながら、自然と、指先が首筋に這っていく。
ナイフの代わりに、小さな爪の先に、ぐっ、と力がこもった。
その時、
「っ!」
突如聞こえた物音に、リオはびくっとして振り返った。
落ち葉を踏みしめる、自分以外の足音。
こんな夜中に…誰かが…森に…──?
リオは物音の正体を確かめようと、夜目の利く目で辺りを見回した。
しかし、月明かりにうっすらと浮かび上がるのは、リオを取り囲む、森の大樹の群ればかり。
もし、万が一人間がこの側に居るのなら、匂いの届かない場所まで一目散に逃げて行かねばならない。
しかし、リオは黒いままの瞳で、音のした方をじっと見つめ続けた。
足音がした。確かに聞こえた。
でも…人間のじゃない…。
この…獣みたいな…にお…い…
「──あ…っ!」
足音の正体に気付き、リオはさっと青ざめた。
同時に、大樹の陰から、獣の唸る声が聞こえてくる。
「っ──!」
威嚇の声を聞き、リオは悲鳴もあげずに駆け出した。
踏み出した瞬間、相手もリオを追って飛び出してきた。
ザッ、ザッ、と風を切るような、軽やかな足音が近づいてくる。
リオはダンへの薬をぎゅっと握り締め、必死に足場の悪い中を走った。
無意識のうちに飛び込めそうな物影を探るが、鼻の良い狼にはかくれんぼなど通用しない。
おれ…
このまま…死んじゃうの…──?
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