アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
03
-
死ねないよ。
この薬を、ダンに届けるまでは…。
ダンに、「ありがとう」と「さよなら」を伝えるまでは…。
こんなところで、死ねないよ!
リオはキッと足を止め、その場で素早く踵を返した。
その手には、念のためにとロイドに持たされた、手の丈ほどの小型のナイフ。
追っ手の正体は、やはり狼だった。
暗褐色の大きな影が、森の障害物をものともせず、一目散にリオのほうへ向かってくる。
リオは薬瓶を服の中に押し込め、最後の希望をぎゅっと握り直した。
神様、お願い。
もう少し、もう少しだけ、この罪深い命を繋ぐことをお許しください。
お願い。
お願い…──。
大きな影が迫ってくる。
奥歯が震え、カチカチと鳴る。
リオが固く目をつむったその瞬間、狼が、目前で大きく跳躍した。
「──…え…っ…?」
両手足をぴんと伸ばした狼は、リオを飛び越え、遥か遠くの地面に着地した。
そして今は、リオの存在になど目もくれず、森のどこかへと走り去って行く。
もしかしたら、狙っていた獲物は自分ではなかったのか…──?
極度の緊張から逃れ、リオはすとんとその場に腰を下ろした。
限界まで詰めていた呼吸が一気に戻り、大きく息を吸い込む。
その途端、甘く咽返るような香りが、リオの鼻腔を駆け抜けた。
涙の浮かんだリオの目に、月明かりでない灯りが映る。
顔を上げると、そこはもう、ルーナ村のすぐ側だった。
・
・
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
45 / 83