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1章:アサガオは芽吹かない1
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「床嶋(トコシマ)さぁーん、起きてー!」
部屋に鳴り響く声とカーテンレールの音。
次の瞬間には眩しい日光が瞼越しに感じられ、体に掛かっていた布団を手繰り寄せて頭を覆った。
「あ、ダメだって。起きて!」
逃がさないと言うように布団を剥ぎ取られる。
瞼を開けて傍らに立つ青年へと視線を向けた。
髪は焦げ茶色、瞳も同じ色で肌は白い。
色素が薄い体質なんだろう。
「おはよ、床嶋さん!」
布団を持ったまま、朝日に負けないぐらいの眩しい笑顔を見せた。
「朝ご飯、トーストでいい?」
「何でもいい。」
「床嶋さん、いっつもそれなんだから。」
笑顔から一変して青年はムッと口を尖らせた。
朝から忙しない。そんな事を考えながらベッドを抜け出し、洗面台へと向かう。
「ハムエッグも付けるからね!」
青年は俺の背中へと言葉を投げるとキッチンへと駆けていく。
洗面台には既にタオルが用意されていた。
アイツがやったものだろう。
ぬるま湯を顔に押し当てて少し乱暴に目元を擦った。
何度か繰り返し、水滴をタオルで拭き取る頃には意識がしっかりと覚醒する。
「あ、座って、座って!」
リビングへ顔を出すと待ちわびたとばかりにダイニングへ座るよう促される。
テーブルには焼きたてのトースト、ハムエッグ、コンソメスープそれからイチゴジャム。
薫り立つトーストを手に取り口へと運ぶ。
サクッと音が鳴って、口には柔らかな食感が広がった。
「ん!この食パン美味しい!」
同じようにパンを頬張った青年は嬉しそうに声を上げる。
青年ーー名は奈都(ナツ)と言った。
今朝は共同生活を始めて一週間目の目覚めだった。
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