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「君広!」
「……っ!」
切羽詰まった声で我に返ったのか、信じられないとでも言いたげな瞳が俺を映した。
ぽってりとした唇が、ふるりと震えて、次の瞬間。
「俊介!!」
もう一人の友人の名前を叫んだ君広を、唖然と見る。
小さな体のどこに、そんな声量を隠しもっていたのか問い詰めたくなるぐらいの大声。
教室中どころか、学校の外にまで響き渡りそうな声に、一瞬鼓膜が破れたかと思った。
「ちょ、君広!」
「俊介、裕一が! おとっ」
クラス中の視線を浴びながらも、構わずに叫び続ける君広の口を、慌てて掌で覆い隠す。
ちょっと待て。そんな大声で何を晒そうとしてるんだっ!
俺の手を解こうとする君広と、これ以上叫ばせてたまるかと塞ぎ続ける俺で、謎のバトルを繰り広げる中、教室の扉が開いた。
それはもう、扉が吹っ飛んだかと誤解する程の勢いと音をつけて。
「裕一が何だって!?」
冷や汗もそのままに振り返れば、額の汗を、傷だらけの手の甲で拭った水野 俊介(みずの しゅんすけ)がいた。
ゼーゼーと息を切らしているところから見ても、全速力で走ってきたに違いない。
心の中で深い溜息を吐いて、俊介の登場で落ち着いた様子を見せた君広の口から手を離した。
「つか、またお前屋上で寝てたのか」
「うっせ。それより、何があった」
俺の質問には答えずに質問返しをされて、片方の口端がヒクリと引き攣った。
「裕一が告られた」
「ちょ、君広! お前何勝手に話して」
「……は?」
一瞬の間。肉食獣を連想させる俊介の整った顔が崩れ、全身から黒いオーラを放出しているような気がする。
鳥肌が立って、慌てて助けを求めようと周りを見渡したけど、クラスの奴らも俺と同じで青褪めていた。
よく見ると、携帯電話のマナーモード状態のように震えているようにも見える。
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