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「……」
「慧都…?」
頭が回らなくて、黙ったままだった僕が、受け入れたと思ったのか、翼冴は再び唇を重ねてきた。
「…翼冴っ…」
翼冴は唇を離すと僕の首元に顔を埋め、あろうことかそこに赤い痕を残した。
ピリッとした僅かな痛みにようやく思考が追いつく。
つまり、告白されて、キスされた。
そして、翼冴が再びキスをしてこようとしてきて、ハッとして思いっきり肩を押した。
「離せっ!」
それでよろついた翼冴の腕がテーブルに置いてあったグラスに当たり、床に落ち、グラスは割れてしまった。
フローリングに黒い水溜りが出来る。
けれど、今そんなことに構っていられない。
翼冴に肩を掴まれて、逃れようと体を後ろへ引く。
「…やめろよ!僕は翼冴のことそういう意味で好きじゃ…っ」
言いかけたところで手で口を塞がれる。
「許可もなしにキスしてごめんっ!でもっ俺は男とか、そんなの関係なく慧都のことが好きなんだ!
…今すぐじゃなくて、ちゃんと考えて返事をして欲しい」
そう言った翼冴の表情は何だか今にも泣きそうで、苦しそうで、何も言えなくなった。
「…ごめん、大きな声出して」
「……」
何より、無理やりされることがどういうことなのか、身を以て知ることになった。
「今日はもう終わりにしよ。…ちゃんと考えるから」
そう言うと少しだけ、翼冴の表情が明るくなった。
荷物を持った翼冴と二人で廊下に出る。
そして不意に立ち止まると、僕の首元を見て申し訳なさそうに謝った。
「ごめん…俺…」
「もういいよ…でも、今日は帰って」
「ごめん、慧都…」
「うん、分かったから」
嫌われたくないからなのか、何度も謝ってくる。
いつもと違う翼冴に、戸惑っている僕がいる。
「じゃあ…」
「うん、また明日」
僕が明日、と言うと安心したように笑って、外へ出て行った。
閉まった扉を見てその場に座り込んだ。
翼冴のことよりも、壱椰のことで頭がいっぱいだった。
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