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俺の王様
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俺はレオナルトに気づかれないように、部屋の入口を見てポツリと聞く。
「お腹空いた…。食事って何があるの?」
「ん?ああ、あまり時間が無いからな。肉を挟んだパンとスープだ」
「へぇ、美味しそう。早く食べたい」
「カナデは本当に我儘だな。まあ、何でも言うことを聞く人形よりは面白い。少し待ってろ」
いやいや、あんたの方がよっぽど我儘だけど…と喉まで出かかった言葉を飲み込んで、俺は小さく頷く。
レオナルトが席を立って入口に向かい、ドアを開けて外を覗いている隙に、俺は静かに立ち上がった。
レオナルトを窺いながら、椅子の傍にある腰までの高さの窓を、片手で押してみる。小さくキィと鳴って、窓が開くことを確認すると、俺は両手で窓を全開にして窓枠に足をかけた。
物音に振り向いたレオナルトが、走り寄って俺を掴むよりも早く、「アルーッ!」と叫んで俺は窓から飛んだ。
これは足を折るな、もう痛いのは嫌なんだけど…と思った俺の身体に炎が巻き付き、馬上の黒いマントの男の元へと引き寄せられる。俺の身体がポスンと男の胸に収まり、安堵から全身の力が抜けてしまった。
男はしっかりと俺を左腕で抱きしめ、右手を前方へと突き出す。
顔だけ後ろに向けて見ると、建物の2階の窓からレオナルトが水の刃を飛ばし、男が火の塊でそれを弾き飛ばしていた。
レオナルトの後ろにナジャが現れ、水の刃が2倍に増える。
「ちっ…、面倒だ。ヴァイス、翔べ」
よく聞き覚えのある低い声で男がそう言うと、白い馬の背中から翼が生えて、助走をつけながら一気に空へと飛び上がった。
「えっ?ええっっ!とっ、翔んでるっ!馬が翔んでるっっー!」
わぁわぁと叫んで、俺は男に強くしがみつく。
まるで伝説のペガサスのような綺麗な翼を広げて空を駆ける馬がかっこいい。かっこいいのだけど、不安定に揺れながら飛ぶのはかなり怖い。
カタカタと震える俺の身体を強く抱き締め返して、男がやっと口を開いた。
「カナ、大丈夫だ。俺がおまえを決して落としたりしない」
「アル…、アル…っ!俺っ…俺っ、怖かったぁっ。どこに連れて行かれちゃうんだろって、怖かったぁーっ!」
「…そうか。だが、俺がそんなことはさせない。どんなことをしても、必ずカナを見つけてみせる。今回は、カナが機転を効かせてくれたおかげで早く見つけることが出来た。偉かったぞ」
「ほんと?わかってくれたんだね…。アル、ありがとう…」
スリスリとアルファ厶の胸に顔を擦り付けて、アルファ厶の匂いを吸い込む。
いつの間にか俺は、アルファ厶の匂いに、すごく安心するようになっていた。
「だが、あまり遠くに行くなと言ったのに、調子に乗ったカナも悪い。後でお仕置きだな」
「え?なんで!」
「なんでもだ。俺を心配させた罰だ」
お仕置きだ罰だと物騒なことを言いながら、アルファ厶は、フードの下からあの太陽のような眩しい笑顔を見せた。
たちまち俺の胸がきゅんと鳴って、アルファ厶に会えたからもうどうでもいいや…、と再びアルファ厶の胸に頬を押し当てた。
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